エル・テムル

エル・テムルの生涯と影響力

エル・テムル（El temür）は、1300年代初頭のモンゴル帝国における重要な将軍であり、その活動は大元ウルスの動乱期における権力闘争を象徴しています。彼はモンゴルのキプチャクに由来し、祖父トトガクや父チョンウルの影響を受けて、モンゴル帝国の中で名を馳せました。

来歴

エル・テムルの家系は、モンゴル帝国の成立に深く関与しており、彼自身も内乱を通じて急速に出世しました。彼の祖父トトガクは、クビライのもとで重要な役割を果たし、父チョンウルも歴史的な戦いでの成功を収めました。このような背景を持つエル・テムルは、若い頃からカイシャンの幕下で活躍し、その信任を獲得しました。

強力な軍を指揮する中で、彼は次第に政権の中枢に寄与するようになり、泰定帝イェスン・テムルの治世では榮譽ある地位へと昇進しました。

天暦の内乱

1328年、イェスン・テムルが突然死去すると、エル・テムルは大都で子飼いの軍団と共に留守を守っていました。この機に彼は、イェスン・テムルの側近たちの権力集中を阻止すべく反乱を起こし、カイシャンの息子トク・テムルを擁立しました。エル・テムルはその後、多くの重要な官職に任命され、実質的な権力を握りました。

一方、北方の上都では、別の勢力がアリギバを即位させ、両者の間で内戦が勃発しました。エル・テムルは大都の軍勢を指揮して上都勢力を破り、最終的にはアリギバとその側近を降伏させました。

その後、コシラが現れ、エル・テムルは彼を擁立し、太師の地位を与えられましたが、コシラの急死によって再び政権の主導権を求めることとなります。彼は強力な仮想権力者として君臨し、トク・テムルを完全に操り、エル・テグスを養子として育てました。

晩年と影響の後退

トク・テムルが亡くなると、エル・テムルは彼の遺志を無視し、自らの養い子であるエル・テグスの即位を画策しました。しかし、最終的にはコシラの子である子どもが即位することになります。ところが、その幼帝はわずか43日後に亡くなり、状況は再びエル・テムルの思惑を狂わせました。

最終的に、彼はトゴン・テムルを擁立しようとしましたが、提案においてその反応が思わしくなかったため、無駄に努力することとなりました。エル・テムルは1333年に病死し、彼の死後も一族は力を振るいましたが、権力の変遷が進むにつれて影響力は衰えていきました。特にバヤンが政権を奪取し、彼の一族は次々と排除されることになります。

結論

エル・テムルの生涯は、モンゴル帝国における権力闘争の縮図とも言えます。彼は内乱を察知し、巧妙な策略で一時的に権力を掌握しましたが、その後の政権内の変動によって影響力は長続きしませんでした。彼の生涯を通じて見えるのは、時代の変遷と権力の流動性です。エル・テムルの物語は、モンゴル史の一角を形成する重要な部分として今も語られています。

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