室井光広

室井光広（むろい みつひろ）

室井光広は1955年1月7日生まれ、日本の文学界において多彩な役割を果たした小説家および文芸評論家です。2019年9月27日に亡くなるまで、彼は日本文壇において独自の地位を築き上げました。

来歴

福島県南会津郡下郷町に生まれる彼は、農家に育ちました。福島県立会津高等学校を経て早稲田大学の政治経済学部に入学しますが、理数系の科目に苦しみながら次第に演劇に興味を持ち始めます。在学中にドストエフスキーの著作に魅了され、さらにはキルケゴールの思想に関心を深めていきました。そこで彼は帰郷し、デンマーク語を独学で習得。ロンドンから取り寄せたテープでアンデルセンの童話を聞くなど、多様な学びを続けました。

21歳の時、早稲田大学の学生新聞が主催するキャンパス文芸賞にドストエフスキー論で入選し、その才能を開花させます。後に慶應義塾大学文学部に再入学し、哲学を専攻。さらに、様々な言語を独自に学びました。卒業論文はミシェル・フーコーについてのものでした。

拓殖大学の図書館で司書を務める中でホルヘ・ルイス・ボルヘスと出会い、これを契機に俳句や短歌、詩、評論、小説などを執筆し始めます。32歳の時に図書館を退職し、主夫として家庭に大きな役割を果たします。

文学業績

1988年の『零の力　J.L.ボルヘスをめぐる断章』で第31回群像新人文学賞（評論部門）を受賞し、1991年には『群像』に短編小説「猫又拾遺」を発表し、小説家としての道を歩み始めました。1994年に発表した作品『おどるでく』で第111回芥川龍之介賞を受賞しますが、その売上は芥川賞受賞作としては最低でありました。しかし、作家仲間からは賛辞を受け、彼の作品が持つ独自の価値を再確認されるきっかけとなりました。

彼は1995年から東京工業大学、1998年から立教大学において講義を行い、2001年以降は慶應義塾大学や早稲田大学でも教壇に立ちます。その後、2006年には東海大学文学部文芸創作学科の助教授となり、2011年の東日本大震災を経て大学を退職します。2012年には文学塾「てんでんこ」を立ち上げ、主宰として多くの学生や志に燃える作家を育成しました。

主な著作

彼の著作には多様性があり、『漆の歴史――history of Japan』や『猫又拾遺』、受賞作『おどるでく』など幅広い作品が存在します。また、評論・エッセイ作品も多数執筆しており、特にボルヘスやフーコーに関する作品は高く評価されています。以下は彼の主な作品リストです。

• - 『漆の歴史――history of Japan』（1988年）
• - 『猫又拾遺』（1994年）
• - 『おどるでく』（1994年）
• - 『零の力』（1996年）
• - 『キルケゴールとアンデルセン』（2000年）
• - 『カフカ入門――世界文学依存症』（2007年）
• - その他、数多くの短編、小説、批評を発表しました。

最後に

室井光広はその独自の視点と深い洞察力を活かし、日本の現代文学に影響を与え続けました。彼の文学世界は多くの読者や学生に愛されており、彼の執筆スタイルは、読者に新たな視点をもたらしました。2019年に彼がこの世を去った後も、彼の作品は読み継がれ、多くの人々に感銘を与え続けることでしょう。

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