室内交響曲第2番 (シェーンベルク)

室内交響曲第2番 変ホ短調 作品38

概要

アルノルト・シェーンベルクによる2曲の室内交響曲のうち、後者にあたる作品です。正式名称は「室内交響曲第2番 変ホ短調 作品38」（Kammersymphonie Nr.2 es-moll, Op.38）と称されます。

作曲の経緯

この作品はシェーンベルクの創作歴の中でも、非常に特異な位置を占めています。作曲への着手は、室内交響曲第1番の完成後、1906年に開始されました。しかし、その後、作曲は度重なる中断に見舞われ、最終的に楽譜が完成を見たのは、実に着手から34年後の1940年という、前例のない長期にわたる歳月を経てのことでした。

この作曲が中断されていた期間は、まさにシェーンベルクの音楽語法が劇的な変化を遂げていた激動の時代と重なります。彼は初期の豊かな調性音楽から、表現主義的な無調の探求へと移行し、やがて独自の十二音技法を確立しました。晩年のアメリカ時代には、一部の作品で再び調性的な要素が用いられることもありました。室内交響曲第2番の作曲が中断されたのは、彼が無調や十二音技法へと向かっていた変革期の真っ只中であり、長年の中断を経て完成されたこの作品には、作曲開始当時の音楽語法と、その後の技法や表現の深化が混在している点が大きな特徴となっています。

1916年に門下生のアレクサンダー・ツェムリンスキーに送られた書簡には、シェーンベルクが当時すでに第1楽章の大半と第2楽章の途中までを書き上げていたこと、そしてこれら2つの楽章をまとめて「第1部」とし、それとは別に全く新しい「第2部」を作曲するという構想を持っていたことが記されています。しかし、この壮大な計画は実現には至らず、長らく作品は未完成のまま放置されていました。

1940年、ナチスによる迫害を逃れてアメリカに渡っていたシェーンベルクは、この未完の作品を完成させる決意を固めます。この時期にはすでに十二音技法を確立していましたが、彼はこの室内交響曲第2番を着手当時の素材を基に完成させました。その結果、作品は調性的な要素を強く残しながらも、より洗練された作曲技法や表現力を備えたものとなりました。この長期にわたる作曲過程は、シェーンベルクの生涯における音楽語法の変遷を凝縮して示すかのようです。作品が完成に至った背景には、当時の緊迫した国際情勢や、作曲者自身の芸術的成熟があったと考えられます。

楽曲の構成と特徴

室内交響曲第2番は、以下の2つの楽章から構成されています。

1. 第1楽章：アダージョ (Adagio) - 約9分
2. 第2楽章：コン・フオーコ (Con fuoco) - 約11分

全曲の演奏時間は約20分程度です。

楽器編成は、フルート（ピッコロ持ち替えを含む）、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペットがそれぞれ2本ずつ、そして弦楽五部（ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス。各パート複数奏者）という、室内オーケストラに匹敵する規模です。

初演

この作品の初演は、完成した1940年の12月15日に、アメリカ合衆国のニューヨークで行われました。指揮はフリッツ・スティードリーが担当し、フレンズ・オヴ・ニュー・ミュージック管弦楽団が演奏を務めました。

その他の情報

シェーンベルク自身によって、この作品は1942年に2台のピアノのための編曲（作品38b）が作成されています。これにより、原曲のオーケストラ編成以外でも、演奏や研究の機会が広がりました。

参考文献・外部リンク

本稿の執筆にあたっては、以下の文献・情報を参照しました。

『作曲家別名曲解説ライブラリー16 新ウィーン楽派』（音楽之友社）
アーノルト・シェーンベルク・センター公式サイト内の室内交響曲第2番に関するページ

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