宮体詩

宮体詩（きゅうたいし）は、中国の南北朝時代、南朝梁の簡文帝蕭綱が皇太子であった時代に、徐摛（じょち）・庾肩吾（ゆけんご）らの文人たちと共に確立した詩体です。「宮体」とは、「東宮（皇太子）の詩体」という意味を持っています。

特徴

宮体詩の大きな特徴は、女性の姿態や身のこなし、身につけている装飾品などを細やかに描写することで、男女間の情愛を主題としている点にあります。また、詩の形式面においては、先行する沈約（しんやく）・謝朓（しゃちょう）らの「永明体（えいめいたい）」を継承し、詩の形式美や韻律美の追求において、より一層の洗練が図られています。

簡文帝は、徐摛の子である徐陵（じょりょう）に命じ、これらの宮体詩に加えて、漢代からの「艶詩」を収録した詞華集『玉台新詠（ぎょくだいしんえい）』を編纂させています。徐摛・庾肩吾親子の詩文は「徐庾体（じょゆたい）」と称され、当時の人々の間で非常に流行しました。

宮体詩は、南北朝後期に大いに流行し、南朝梁の後を継いだ南朝陳や、北朝でも制作されました。しかし、その「綺羅脂粉（きらしふん）」を重視する側面は、唐代以降、文学において儒教の復興が図られるようになると、文学の堕落として批判されることもありました。「綺羅脂粉」とは、美しい衣装や化粧を意味し、外見の美しさばかりを重視する傾向を指しています。

代表的な詩人

蕭綱（しょうこう）：簡文帝
徐摛（じょち）
庾肩吾（ゆけんご）
徐陵（じょりょう）
庾信（ゆしん）
蕭繹（しょうえき）：梁の元帝
陳叔宝（ちんしゅくほう）：陳の後主
江総（こうそう）

関連項目

漢詩
中国文学
* 永明体

もう一度検索