宮島の猿

宮島の猿について

宮島の猿は、広島県廿日市市の厳島（宮島）で見られるニホンザル（Macaca fuscata）です。猿の存在は、宮島の独自の文化や歴史を物語っており、当島の生態系における重要な要素となっています。

沿革

宮島に猿がいつから生息していたのかは不明ですが、野生の猿に関する伝承は存在します。ただし、宮島の鹿のように古い歴史には留まらないと言われています。厳島神社の神使は烏であり、猿や鹿は神社の神使とは見なされていません。厳島神社の創建以降、宮島は神の島として崇敬されるようになり、島民の間では不殺生の風習が育まれました。このことから、猿は人間に迷惑をかける存在として扱われ、弥山へと追いやられたという経緯があります。

江戸時代には宮島に猿が一定数生息していたことが確認されています。明治時代に入る頃には、その存在は徐々に減少し、最終的には絶滅したと思われています。このような理由から、江戸時代には観光客を惹きつけるために猿が楊枝屋に飼われていたことが想定されます。

明治以降の状況

明治初期に、山口県から15頭の猿が厳島神社に奉納されましたが、これらは悪行を繰り返したため半年ほどで捕獲されました。結果として、明治時代の猿の生息は途絶えたとされています。 現在の猿は、1962年に小豆島から持ち込まれた47頭から派生しています。これらの猿は、宮島での生態学的研究を目的として放たれました。その後、観光目的としての利用も進められ、宮島ロープウェイの終点近くには餌場が設けられましたが、その影響で猿による被害も報告されていました。

生息環境の変化

1970年代には、学術的な研究から観光の方向に利用が変わり始めました。1989年にはJMC宮島研究所が廃止され、その後は広島観光開発が運営する宮島野猿公苑が設立されました。この時期、餌付けされた猿が野生化し、その数は増加しました。しかし、増えすぎた猿による被害が深刻化したため、2010年から2013年にかけて再度、猿の捕獲が行われ、現在いる猿はその捕獲から逃れた個体です。

文化の中の猿

猿に関する文化も宮島特有です。特に有名なのが「猿瓦」と呼ばれる瓦の形状で、猿が屋根に登らないように工夫されています。また、「猿の口止め」という行事も存在し、毎年旧暦11月初申の日に大きな音を立てない慣習があります。さらに、宮島の伝統的な土産物として、色鮮やかな楊枝が過去には作られていました。これらは宮島の猿文化と深く結びついています。

現在と観光

現在、宮島では猿は野生動物とされており、観光名所としてのロープウェイ周辺にはもはや多くの猿は観察されません。観光客への餌やりは禁止され、猿の生態も尊重されています。2017年からは猿回しも行われており、新たな観光資源として活用されていますが、猿の生態系と人間の関係は今後も注意が必要です。

宮島の猿の歴史と文化は、人々の生活と密接に関連しており、神聖な島の環境に生きる存在として今もなお重要です。

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