宮田雅之

宮田雅之：刀勢画で切り開いた切り絵の新境地

宮田雅之（みやた まさゆき、1926年10月30日 - 1997年1月5日）は、東京都出身の切り絵画家です。本名を徳永雅一といい、旧姓は桑田雅一でした。彼は、一枚の紙を一本の刀で切り出すという独自の技法「刀勢画」を確立し、切り絵の世界に新たな地平を切り開きました。

谷崎潤一郎との出会い

宮田は、文豪・谷崎潤一郎に見出され、その著作『雪後庵夜話』の挿絵を手掛けたことがきっかけで、挿絵画家としてのキャリアをスタートさせました。この出会いは、彼の芸術家としての人生を大きく左右しました。その後、多くの著名作家の小説の挿絵も担当し、その才能を広く知らしめました。

刀勢画とは

宮田の「刀勢画」は、単なる切り絵の域を超えた芸術作品です。研ぎ澄まされた感性から生み出される刀の勢いは、大胆かつ繊細な線を織りなし、従来の切り絵の概念を覆しました。その完成度の高さは、国内外で高く評価され、美術界に大きな衝撃を与えました。

多彩な活躍

宮田は、NHK大河ドラマ『花の乱』のタイトル画と題字を担当し、毎週登場する華麗な新作切り絵が話題を呼びました。また、日本人初の国連公式認定画家にも選任され、その作品は世界184ヶ国で紹介されました。

海外での評価も非常に高く、作品は国連、ホワイトハウス、バチカン美術館、中国国家迎賓館釣魚台など、各国の主要施設に収蔵されています。特にブラジルでは、日伯移民70周年記念特別企画としてカイゼル大統領の招待を受け、各地の美術館で個展を開催し、大きな反響を呼びました。

中国での評価

切り絵はもともと中国で発展した芸術ですが、宮田の作品は本家中国においても第一人者として高く評価されています。上海図書館内には「刀勢画・宮田雅之芸術記念庁」、中国美術学院内には「宮田雅之刀勢画研究室」が開設され、その偉業を称えています。記念庁には、代表作100余点と画集、愛用の刀などが展示されています。

その生涯

1926年に東京赤坂に生まれた宮田は、1954年にチャールズ･E･タトル出版社にブックデザイナーとして入社。1960年には全米ブックジャケットコンテストに入賞するなど、早くから才能を発揮していました。

1972年には講談社出版文化賞（挿絵部門）を受賞。1973年からはハワイ、ギリシャ、ブラジルで個展を開催するなど、世界を舞台に活躍しました。1981年には、バチカン美術館に切り絵『日本のピエタ』が収蔵され、ローマ法王ヨハネ・パウロ2世に謁見し、『赤富士』を献上しました。

1980年代以降も、谷崎潤一郎生誕100年記念個展、画歴30周年記念個展など、精力的に活動を続けました。1996年には、北京中央工芸美術学院（現・清華大学）などの客員教授に就任し、日中国交正常化25周年記念の芸術展も開催しました。

1997年1月5日、上海からの帰国途中に急性脳梗塞で急逝。70歳という若さでその生涯を閉じました。彼の死後も、回顧展が開催され、その作品は多くの人々に感動を与え続けています。

主要な作品

宮田の代表作には、『奥の細道』、『源氏物語』、『わらべの詩』、『花の乱』などがあります。また、『赤富士』、『日本のピエタ』、『桜花図』など、単一の作品も数多く、美術館や施設に収蔵されています。

宮田雅之は、独自の「刀勢画」という技法を通じて、切り絵の世界に革命をもたらした偉大な芸術家でした。彼の作品は、今もなお多くの人々に愛され、その芸術は後世に語り継がれていくことでしょう。

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