家 (島崎藤村)

島崎藤村の小説『家』

『家』は、島崎藤村が1910年から1911年にかけて発表した長編小説です。この作品は、二つの旧家、小泉家と橋本家の盛衰を通して、明治時代の家制度と、その中で生きる人々の姿を詳細に描いています。藤村自身の生家である島崎家をモデルにした小泉家と、姉が嫁いだ高瀬家をモデルにした橋本家を対比させ、時代の変化の中で旧家のあり方がどのように変容していくのかを考察しています。

あらすじ

物語の舞台は木曾地方。そこで歴史を重ねてきた小泉家と橋本家は、時代の波に乗り切れず、徐々に衰退していきます。家長の小泉実と橋本達夫は、伝統的な旧家の生き方に縛られ、時代の変化に取り残されています。一方、跡継ぎである橋本正太と、達夫の義弟である小泉三吉は、旧家の血筋という宿命から逃れられずに苦悩します。家を立て直そうと奔走した正太は、株取引に失敗し、女性問題にも悩んだ末に名古屋で亡くなります。三吉は、夫婦関係や兄との関係に悩みながらも、作家として成功し、一家を支える存在へと成長していきます。

登場人物

小泉三吉: 島崎藤村自身がモデル。作家として成功し、家の中心人物となる。妻はお雪。
橋本正太: 高瀬兼喜がモデル。橋本家の長男で、家を立て直そうとするが失敗し、失意のうちに病死する。
小泉実: 島崎秀雄がモデル。小泉家の当主で、旧弊な考え方に固執する。
橋本達夫: 高瀬薫がモデル。橋本家の家長で、伝統を重んじる。

映画化

2013年には、秋原北胤監督によって映画化されました。映画では、橋本達夫の妻であるお種を主人公に据え、彼女の視点から物語が展開されます。西村知美が主演を務めました。映画は昭和初期を舞台としていますが、一部に時代考証の不備が見られます。

キャスト

橋本種子：西村知美
小泉三吉：松田洋治
小泉雪：伴杏里
橋本仙：木本夕貴
橋本正太：中山卓也
小泉倉：渡辺葉子
小鈴：折原あやの
小泉俊：菖蒲理乃
橋本達雄：スティーヴ エトウ
橘春子：今村祈履
橋本豊世：大谷みつほ
小泉森彦：小倉一郎

スタッフ

原作：島崎藤村『家』
監督：秋原北胤
企画・制作・宣伝・配給：秋原正俊
脚本・編集：落合雪恵
撮影：花坊
音楽：THE金鶴
音響効果：スティーヴ エトウ
繁華街演奏：木村ハルヨ、羽尻皓一
挿入歌：黒崎ジュンコ『Life goes on』『ミスターダーリン』

作品の意義

『家』は、明治時代の家制度という社会構造が、人々の生き方や感情にどのような影響を与えたのかを深く掘り下げた作品です。自然主義文学の到達点として、人間の内面をリアルに描いています。没落していく旧家の姿を通して、時代の変化に取り残される人々の苦悩を描き出し、普遍的なテーマを問いかけています。

外部リンク

『家　1 （上巻）』：新字新仮名（青空文庫）
『家　2 （下巻）』：新字新仮名（青空文庫）
『家』 ：デジタル画像（近代デジタルライブラリー）
映画版公式サイト
家 - 映画.com
* 家 - allcinema

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