家庭交響曲

リヒャルト・シュトラウス『家庭交響曲』 作品53

リヒャルト・シュトラウスが作曲した『家庭交響曲』（Sinfonia Domestica、Symphonia Domestica）作品53は、約43分の演奏時間を要する標題交響曲です。この作品は、作曲者自身の家庭生活を音楽で描いたものであり、家族の日常や感情の機微を表現しています。

作曲と初演

1902年から1903年にかけて作曲され、1904年3月21日にカーネギー・ホールにて、作曲者自身の指揮、ニューヨーク交響楽団によって初演されました。日本初演は1954年6月8日、クルト・ヴェス指揮、NHK交響楽団によって行われました。

楽器編成

4管編成という大規模なオーケストラで演奏されます。特徴的なのは、ティンパニ奏者が1人であること、そしてサクソフォーンが4本使われている点です。

構成

この曲は切れ目なく演奏されますが、4つの部分に分けることができます。

第1部: 家庭の主人の主題が「gemächlich（ゆっくりと、のんびりと）」や「träumerisch（夢見るように）」という発想記号と共に提示され、その性格が描かれます。続いて、妻の主題が「sehr lebhaft（きわめて活発に）」という発想記号で登場し、その後、子供や叔母、叔父の主題も現れます。
第2部: 子供たちが遊び、母親の子守唄に包まれて眠る様子が描かれます。音楽は途切れることなく、第3部へ移行します。
第3部: 子供が眠る中、仕事をする夫、夫婦の愛の交歓、妻の気遣いなどが描写されます。ここまで音楽は途切れず、次の第4部へとはっきりと区切られます。
第4部: 子供が起きると、フガートの技法を用いて、両親が子供の教育方針をめぐり喧嘩を始めます。激しい感情のぶつかり合いは、子供を泣かせるほどになりますが、やがて落ち着き、二人は歌を歌います。しかし、再び高潮し、大管弦楽の効果が最大限に発揮されるクライマックスを迎えます。最後は賑やかな家庭生活の描写で幕を閉じます。

最後のクライマックスには、ティンパニ独奏によるニ長調の音階が登場します。これは出版されたスコアには記載されていませんが、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のティンパニ奏者が発案し、作曲者の承諾を得て、後に出版譜にも記載されるようになりました。

演奏

指揮者では、マゼールやサヴァリッシュが積極的に演奏し、録音も残しています。その他、メータ、セル、ライナー、オーマンディ、ケンペ、プレヴィン、アシュケナージ、カラヤンなど、多くの指揮者による録音を聴くことができます。
歴史的な演奏としては、作曲者自身とフルトヴェングラーによるものが重要です。

この曲は管楽器、弦楽器ともに高い技術が要求され、編成も大きいため、実演で聴く機会は多くありません。特に第4部は金管楽器を躍動的に使い、技術的に困難な箇所も多いです。アマチュアオーケストラでの演奏例は少ないです。

『家庭交響曲余録』 作品73

『家庭交響曲余録』（Parergon zur Sinfonia Domestica）作品73は、リヒャルト・シュトラウスが作曲した左手のためのピアノ協奏曲です。『家庭交響曲へのパレルゴン』という訳題も用いられます。「パレルゴン（parergon）」とは、「付属作品」「副産物」を意味します。

単一楽章で構成されており、腸チフスで重体に陥った息子フランツの体験がテーマとなっています。『家庭交響曲』の「子供の主題」が引用されています。

1924年から1925年にかけて作曲され、1925年10月6日にパウル・ヴィットゲンシュタインのピアノ、フリッツ・ブッシュ指揮、シュターツカペレ・ドレスデンによって初演されました。演奏時間は約21分です。

出典

外部リンク) 家庭交響曲 作品53の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト

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