家康行列

家康行列：岡崎の春を彩る時代絵巻

家康行列は、愛知県岡崎市で毎年4月の第1または第2日曜日に開催される時代行列で、「岡崎の桜まつり」のメインイベントとして知られています。公募で選ばれた徳川家康公を始め、勇壮な三河武士団や華やかな姫列など、総勢700名を超える人々が岡崎市の中心部を練り歩き、時代絵巻を繰り広げます。

起源と変遷

その起源は江戸時代に遡り、岡崎城内の映世神社で行われていた「映世明神祭礼」に由来します。この祭礼は、徳川四天王の一人である本多忠勝を祀るもので、藩主自らが軍装を整え、家臣を率いて行軍の儀式を行っていました。

明治時代に入り、映世神社と東照宮が合併して龍城神社となると、家康の命日である4月17日が例祭日となり、旧藩士後裔による武者行列が第二次世界大戦まで行われました。しかし、1948年の龍城神社の火災により甲冑などが焼失し、行列は一時中断を余儀なくされます。

その後、1950年代に山岡荘八の小説『徳川家康』がブームとなり、1955年に岡崎商店街連盟と岡崎商工会議所の働きかけにより、「家康まつり」として武者行列が復活。岡崎公園を起点に市内を巡る大規模な行進が行われ、多くの人々で賑わいました。

1959年の岡崎城再建を機に、市と観光協会が主催となり、名称も「家康行列」と改められました。1981年からは、家康公役をはじめとする主要な配役を公募するようになり、市民参加型のイベントとして定着しました。

イベント内容

現在の家康行列は、伊賀八幡宮での出陣式を皮切りに、岡崎市内を練り歩きます。行列は、県道39号を南下し、康生北交差点、籠田公園、伝馬交差点を経て国道1号を横断し、東岡崎駅前通りを通って殿橋下流左岸に到着します。乙川河川敷では、火縄銃の実演披露や戦国模擬合戦などのイベントも行われ、観客を楽しませています。

かつては1,000人もの人々が参加し、行列の時間も現在より長く、正午に出発して16時に岡崎城に到着・解散していました。また、「家康行列」と「岡崎の歴史行列」の二本立てで行われた時期もあり、「悠紀斎田お田植えまつり列」や「浄瑠璃姫と義経列」など、多彩な隊列が参加していました。

近年では、親善都市や「ゆかりのまち」提携をしている自治体の首長や議長、観光大使、ゆるキャラなども参加し、行列に華を添えています。また、2015年からは、豊臣秀吉の朝鮮出兵以降途絶えていた朝鮮通信使の隊列も加わり、国際色豊かな行列となっています。

市民と観光客が一体となる祭り

家康行列は、岡崎市民にとって春の訪れを告げる風物詩であるとともに、観光客にとっても歴史と文化に触れることができる貴重な機会となっています。時代衣装を身にまとった参加者たちの熱演や、迫力満点の火縄銃の実演、そして華やかな時代絵巻は、訪れる人々を魅了し、忘れられない思い出を刻みます。

岡崎の歴史と文化を体感できる家康行列は、これからも多くの人々に愛され、受け継がれていくことでしょう。

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