家譜

家譜（かふ）とは

家譜とは、一家の系譜を詳細に記録した書物のことです。系図と似ていますが、系図が親子関係を線で結び、簡単な経歴を添えるのに対し、家譜は一族の始祖から各代の人物について、続柄、経歴、事績などを文章で詳細に記述します。

各地の家譜

中国

唐の時代に貴族の間で家譜作成が盛んになりました。『旧唐書』や『新唐書』には多数の家譜が記録されており、王僧孺の『百家譜』、李林甫の『唐新定諸家譜録』などが代表的です。

日本

日本では、奈良時代後期から平安時代にかけて唐の影響を受け、家譜が作成されるようになりました。これは、氏族よりも個々の家を重視するようになった社会の変化と関連があると考えられています。古代の「家記」や「家牒」を家譜の先駆けとする見方もあります。

中世になると家譜形式の記録はほとんど見られなくなりますが、中世後期には由緒書が現れ、家譜の役割を担うようになります。江戸時代には、『鎌倉将軍家譜』・『室町将軍家譜』・『寛政重修諸家譜』などが編纂されましたが、これらは系図としての性格が強くなっています。明治政府も藩主や公卿に家譜の提出を命じましたが、同様に系図としての側面が強いものでした。

琉球

琉球王国でも「系図」と称される家譜が作成されましたが、日本本土とは異なる発展を遂げました。1689年、琉球侵攻後の家系の混乱を正し、士庶の区別を明確にする目的で家譜作成が制度化されました。諸士は家譜を王府に2部提出し、1部は朱印を受けて下賜され、もう1部は王府の系図座で管理されました。1712年には、没落した旧士族にも家譜提出が認められ（新参家譜）、1720年には5年ごとの仕次（増補改訂）が定められました。1729年には、宮古・八重山諸島の島役人層にも家譜提出が認められましたが、姓は二字姓のみに制限されるなどの違いがありました。

琉球の家譜は系祖に遡って記述され、16世紀以前の情報は辞令書や口碑伝承に基づくことも許されましたが、必ず系図座の認定・審査が必要でした。仕次には、加筆された家譜と共に生子証文などの証拠書類の提出が求められ、審査を経て認定された事実は検印された上で本冊に追加されました。当初は日本の系図に近い書式でしたが、18世紀後半以降は中国の宗譜に近い書式に改められました。琉球処分時には、王府に多数の家譜が保管されていました。

琉球処分後、家譜は公的証明力を失いましたが、旧慣温存政策や祖先崇拝の観念から大切にされ、沖縄戦や米国統治下を経ても、現在でも多くの家譜が現存しています。

参考文献

佐伯有清「株」『国史大辞典 3』（吉川弘文館、1983年） ISBN 978-4-642-00503-6
田名真之「株」『日本史大事典 2』（平凡社、1993年） ISBN 978-4-582-13102-4
飯沼賢司「株」『日本歴史大事典 1』（小学館、2000年） ISBN 978-4-095-23001-6

関連項目

族譜

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