族譜

族譜（ぞくふ）について

族譜は、主に中国において形成された父系血縁集団の宗族に関する文書であり、系図を中心に重要な人物の業績や家訓、歴史的出来事などが記されています。また、東アジアの他の地域、特に日本や朝鮮半島においても同様の形式の家系文書が存在します。これらの文書は、家譜、譜牒、宗譜、家乗、世譜、世牒など、様々な名称で呼ばれています。

本来的には、族譜は一族の始祖から現代までの家族の経歴や業績を綴るものであり、ただの系図のように線で繋いで人名を記すのとは異なります。中国の族譜では、父系が重視されるため、女性の先祖や子孫は含まれないのが特徴です。実際、族譜の中でも「宗譜」という呼称が最も広く用いられています。

中国の族譜の発展

族譜の歴史は古く、殷代には既に系図が刻まれた銅器が発見されていますが、正式な譜牒体系が成立したのは西周時代に遡ります。隋唐の時代になると、系譜が貴重視され、官製や私製の系譜が多様に作成されることが増えました。明清時代には、宗族の意識が高まり、家族の詳細な情報が盛り込まれるようになりました。たとえば、宗族の男性の名前に加え、誕生日や死去年、業績、家訓などが記載されました。

中国共産党が成立した後、特に文化大革命の時期には、「旧文化」とされるものが攻撃され、数多くの族譜が破棄されたり、焼却されたりしました。このような背景を考えると、孔子世家譜が古くから残る族譜の一例として挙げられ、世界的にも評価されています。

日本における族譜の変遷

日本では、奈良時代後期から平安時代にかけて、従来の氏文に代わって族譜が作成され始めました。しかし、中世以降は次第に衰退し、江戸時代には家譜が由緒書という形で代替されるようになりました。 "家譜" という名称は、系図の別称として用いられるようになり、江戸時代には『寛政重修諸家譜』など家譜とも呼ばれる系図集が多数作成されました。

朝鮮半島の族譜

朝鮮の族譜は中国の影響を受けて形成されました。15世紀にはさかのぼることができ、現存する最古の族譜は1403年に作成された水原白氏の族譜ですが、これは序文のみが残っています。特に16世紀以降は、両班階級の間で宗族の考え方が深まり、族譜の編纂が盛んになりました。この時期、火事で最初に持ち出す大事な物としても扱われるようになったほどです。

族譜には、家族の男性について生没年月日や経歴、配偶者に関する情報が記載され、女子は夫の名前や本貫と一緒に記されることが一般的です。また、朝鮮の族譜の約半数の姓氏は中国からの帰化人に由来するものであるとされ、歴史的にも多くの族が中国からの移民に起因しています。

現代における族譜の状況

1980年代以降の韓国では、都市部の若いカップルの間で、伝統的な族譜に囚われない命名が人気を集めています。特に、感情的な意味を持たせた韓国固有語の名前付けが好まれ、漢字表記をしないケースが増えています。これに対し、漢字復活を求める声もあり、族譜に規定された名前が記載されることが多いとは言え、現代の家族構成は注目されています。

北朝鮮では、建国以来宗族制度が否定され、族譜の新たな編纂が禁じられています。そのため、国民は本貫や祖先についてほとんど知らない状況にあります。族譜に関するコミュニティ活動も行われていない状況です。

族譜に関連する文化作品

著名な文化作品としては、梶山季之の小説『族譜』があります。1952年に発表され、両班の悲劇や朝鮮での影響を描いており、後に映画化もされています。

以上のように、族譜は中国、中国周辺、そして日本や朝鮮に広がって多くの文化に影響を与えてきた文書であり、大きな歴史的意義を持っています。

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