容斎随筆

『容斎随筆』（ようさいずいひつ）は、中国南宋の洪邁（号は容斎）によって著された随筆集です。

成立と影響

『容斎随筆』は、まず最初の著作が完成し、淳熙7年（1180年）に婺州で出版されました。孝宗皇帝はその内容の質の高さを賞賛し、その後、『続筆』（1193年）、『三筆』（1196年）、『四筆』（1197年）と続刊されました。『五筆』は洪邁の死によって未完に終わりました。

江戸時代の日本では、荻生徂徠が著書『示木公達書目』の中で、学問を志す者にとって必読の書として『容斎随筆』を挙げています。これは、本書が日本の知識人にも大きな影響を与えたことを示しています。

内容

『容斎随筆』の内容は、経史、諸子百家、詩詞文翰（詩や文章）、医術、卜占、天文、暦学、兵法、軍制、地理、植物、仏教、風俗、民間信仰など、多岐にわたります。その特徴は、「考拠精確、議論高潔」（考証が精密で議論が高尚）と評されるように、詳細な考証に基づいた議論の展開です。また、「南宋説部之首」（南宋の説話文学の代表）とも評され、当時の社会や文化を知る上で貴重な資料となっています。

各編の構成

容斎随筆 16巻：各巻15～29則、合計329則
容斎続筆 16巻：各巻12～18則、合計249則
容斎三筆 16巻：各巻 5～20則、合計248則
容斎四筆 16巻：各巻12～24則、合計259則
容斎五筆 10巻：各巻 9～19則、合計135則

参考文献

『四庫全書提要』
聶崇岐『容斎随筆五集綜合引得』
浅野梅堂『寒檠璅綴』

脚注

『容斎随筆』は、南宋時代の文化、社会、思想を知るための重要な文献であり、その学術的な価値は今日においても高く評価されています。

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