諸子百家

諸子百家（しょしひゃっか）

諸子百家とは、中国の春秋戦国時代に登場した学者や学派の集合体を指します。「諸子」という言葉は孔子、老子、荘子、墨子、孟子、荀子などの著名な学者たちを指し、「百家」は儒家、道家、墨家、名家、法家などの多岐にわたる学派を代表しています。

分類

諸子百家の分類は、後の漢代の学者によって行われました。諸子たちは自らを「～家」と名乗ることはありませんでしたが、学派に対する意識は持っていました。特に儒家と墨家の集団は、二つの主要な学派として認識されていました。前漢初期の司馬談は、諸子百家を六つの学派に分けました。これには、陰陽家、儒家、墨家、法家、名家、道家が含まれます。後に後漢の班固が『漢書』の芸文志でこの六家に縦横家、雑家、農家を加え、九流に分類しました。さらに小説家を入れて十家とし、最終的には兵家を加えて合計十一家を諸子百家とする考え方が一般的です。

歴史

春秋時代に数多くの国々が対立し、やがて戦国時代では七つの大国が争う時代に突入しました。この時期には、富国強兵を目指すために新たな政策が必要とされました。その結果、下層の士や庶民が知識を得て、諸侯に対して政策を提案する遊説家のような存在が現れました。彼らは諸侯によってもてなし、その意見を取り入れられました。

また、斉の威王のように一定の学問の場を設けた諸侯もあり、学者たちは自由に学びました。それぞれの思想は多様であり、政治理念や実用的な技術論が混ざり合っていました。墨家は博愛主義や非戦を主張した一方で、実践的な防御論にも特化した集団でした。儒家も政治思想を持ちながら、冠婚葬祭の儀礼に関する専門家でもありました。兵家は戦略や戦術を重視する学問だと見なされていますが、実は無意味な戦争を否定する観点も含まれていました。

このようにして生まれた百家争鳴の時代において、秦朝によって法家が採用され中国統一を支援し、漢以降の王朝では儒家が重視されました。また、道家は民衆に広がり黄老思想として認識されるようになります。兵家の代表である孫子の著作は、後に多くの指導者に影響を与えました。墨家は一時期、儒教の階級主義に対して平等主義を打ち出し、高い影響力を持っていましたが、結局は衰退しました。

書物の著者

諸子たちは自らの思想を広めるため、弟子の育成にも力を入れました。現存する『～子』という文学作品の名目上の著者は諸子本人ですが、実際の著者は多くの場合、その弟子たちが担っています。「子」という尊称は、師匠を意味するもので、著作の伝承に関与したことを反映しています。また、、現存する『～子』の多くは複数の「篇」から成っており、元々は一篇が一つの作品であることを考慮する必要があります。その後、前漢の宮廷図書館において劉向らが作品を整理し、現在の形へと編纂されていきました。

後世の受容

漢代には道家や儒家を中心に諸子百家の思想が統合され、便利な思想が形成されました。この時期、黄老思想や『淮南子』、陸賈・賈誼の思想が影響を持っています。『史記』や『戦国策』には、諸子の伝記や逸話がまとめられました。さらに、図書館の劉向や劉歆は、諸子の著作を整理し『七略』にその一覧をまとめ、これが後の『漢書』芸文志の基礎となりました。

魏晋以降の状況

魏晋以降、儒教や道教の特定の思想が強調される一方で、他の諸子はあまり注目されず、多くの著作は失われる運命にありました。しかし、その中でも諸子全体に光を当てた作品や研究も存在しており、劉勰の『文心雕龍』や教養の高い著作が残りました。これにより、少しずつですが諸子が再評価される動きが見られました。近世では、出版文化の進展により、諸子が再度注目を浴び、学者たちがその研究を進めました。さらには、20世紀末から本格的に発掘された竹簡や帛書により、失われた作品の一部が明らかになりました。これにより、諸子百家の思想は現在でも高い評価を受けており、今後さらなる研究と発展が期待されています。

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