宿守

宿守（やどもり）：『土佐お化け草紙』に描かれた蝦蟇の妖怪

宿守は、江戸時代に描かれた妖怪絵巻『土佐お化け草紙』にその姿が描かれている妖怪です。この絵巻では、馬の妖怪である「馬骨」（ばこつ）と、室内に吊るされた蚊帳の中で向かい合っている様子が描かれています。

『土佐お化け草紙』における宿守

『土佐お化け草紙』の記述によれば、宿守は蝦蟇（ヒキガエル）を殺した人間の寝室に現れるとされています。これは、殺された蝦蟇の怨念が妖怪化したものと考えられます。

蝦蟇としてのヤドモリ

本来、「ヤドモリ」という言葉は四国地方でヒキガエルを指す地方名であり、妖怪のみを指す固有名詞ではありません。土佐国（現在の高知県）では、「クツヒキ」や「オクツ」、あるいは「ヤモリ」や「ヤモリグツ」と呼ばれることが一般的でした。

「ヤドモリ（宿守）」や「ヤモリ（屋守）」という名称は、家を守ると信じられていたことに由来します。愛媛県の宇和地方では、盗人が侵入してきたことを「宿守」が知らせるとされ、高知県では、床下に宿守が住んでいると、嵐の際に大黒柱を抱いて家を守ってくれる、宿守が守っている家には火事が起こらないといった俗信が見られました。

宿守の持つ意味

『土佐お化け草紙』に描かれた「殺した人間のもとへ化けて来る」という描写は、普段から「殺してはいけない」とされていた生物であったことを示唆しています。宿守は、自然への畏敬の念や、生き物を大切にする心を象徴する妖怪と言えるでしょう。

参考文献

湯本豪一『妖怪百物語絵巻』、国書刊行会、2003年。ISBN 978-4-336-04547-8。
常光徹 「「土佐お化け草紙」の俗信的世界」 『妖怪の通り道 俗信の想像力』、吉川弘文館、2013年。

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