寇謙之

寇謙之について

寇 謙之（こう けんし、Kòu qiānzhī）は、365年から448年の間に生きた中国の道士であり、北魏の時代において重要な役割を果たしました。彼は新天師道の創始者であり、道教を体系化させた人物として知られています。その本貫は上谷郡昌平県で、北魏の河南公寇讃の弟にあたります。また、後漢の雲台二十八将の一人である雍奴威侯寇恂の曾孫の流れをくむ寇栄の末裔でもあります。

早年期と修業

若い頃、彼は仙道に興味を持ち、張魯の術を修めるために数年間の修業を重ねました。修業の最中に、彼は仙人の成公興との出会いを果たし、その後華山を経由して嵩山に同行し、十年間にわたってさらなる修業を行いました。

天師の位の授与

415年、太上老君が天から降りてきて、寇謙之の熱心な修業を評価し、彼に天師の位を授けました。また、『雲中音誦新科之誡』という20巻からなる教典を与え、「三張の偽法」やその他の妖術を排除するように命じました。これにより、彼は服気導引の法をも授けられることとなります。

教義と組織の確立

423年、李譜文から『籙図真経』をはじめとする60余巻の書物や鬼神を扱う法、金丹雲英八石玉漿の秘法を受け取り、翌年には北魏の太武帝にこれらを託した文書を献上しました。宰相の崔浩は特に寇謙之に師事し、彼の教えをさらに帝に勧めました。その結果、平城の南北に天師道場が設立され、五層の重壇を持ち、120人の道士が仕えることとなりました。ここでは、一日に6回の祈祷が行われる仕組みが整えられました。

道教の国教化と影響

442年、世祖は道壇に登り、符籙を受け取りました。以来、彼はこの新天師道を尊崇し、道教を北魏の国教としました。世祖自身は「太平真君」と名乗り、446年以降には仏教を排斥する政策を進めました。これに対し、寇謙之は仏教の戒律を参考にし、彼の教典『雲中音誦新科之誡』を定めました。さらに、修業の段階に応じた資格を制定し、師弟関係の秩序を構築することで道教の組織化を進めました。

道教の隆盛への寄与

寇謙之による道教の整理と強化は、中国北部における道教が、その後の王朝によって国教同様に扱われる基盤を築きました。彼の影響は唐代以降、道教が隆盛を迎える準備をする上で重要な役割を果たすこととなります。彼の業績は、後の道教思想における重要な礎を築いたといえるでしょう。

脚注・参考文献

• - 尾崎正治「寇謙之の神仙思想：神瑞二年(415)までを中心にして」（『東方宗教』54、1979年）
• - 春本秀雄「北魏太武帝と寇謙之」（『中国学研究』12、大正大学、1993年）
• - 砂山稔『隋唐道教思想史研究』（平河出版社、1990年）

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