富士川用水

富士川用水の詳細

富士川用水は、静岡県富士市を縦断する県営の農工業用水路であり、その歴史は1966年の完成に遡ります。翌1967年4月1日より全量給水が開始され、現在に至るまで地域にとって重要な役割を果たしています。

概要

富士川用水は、工業用水としての利用が特徴的で、2008年3月末時点での使用実績は1日あたり16万7,918立方メートルに達しています。原水を自然流下で各工場へ供給する方式を採用しているため、静岡県内の他の工業用水事業と比較して、非常に安価な利用価格が設定されている点が大きな特徴です。計画当初は、約1,000ヘクタールの水田を潤すことを目的としていましたが、その後の都市化により、水田の多くは市街地へと変化しました。しかし、富士市を縦断する上掘・中掘・下掘用水は、現在でも環境用水、地域用水として重要な役割を担っています。

計画

計画は、静岡県富士郡芝川町にあった中部電力三ヶ月島発電所（水力発電所）の放水を、トンネルによって富士市内まで導くというものでした。総延長約7キロ[[メートル]]にも及ぶこの用水路の建設によって、毎秒1,013立方メートルの水が農業及び工業用水として利用可能になるという壮大な構想でした。この「県営富士川用水建設事業」は、総工費13億8,900万円をかけて、1951年（昭和26年）に着手され、1957年（昭和32年）から実際の工事が開始されました。当初は1960年度（昭和35年）の完成を目指していましたが、工事は困難を極めることとなりました。

難航した工事

1958年（昭和33年）11月より、6箇所で同時に掘削作業が開始されましたが、下流側では地下水を含んだ軟弱な地盤に遭遇し、湧水と土砂の噴出が頻発しました。この状況は、当時の日本のトンネル工事史上でも類を見ないほどの難工事となり、工事開始翌年の1959年度（昭和34年）には、わずか180メートルの掘削中に土砂噴出による人身事故が16回も発生し、そのうち4回は死亡事故となり、合計9名もの犠牲者を出すという痛ましい事態となりました。この事態を受けて、地元労働基準局から工事の中止命令が下されました。さらに、富士宮市南方の星山丘陵下付近に存在する活断層を貫通する必要があったことも、工事を一層困難にしました。

この難局を打開するため、特殊な掘削工法が採用されました。圧縮空気を用いた高圧連続圧気施工は、関門トンネルでの施工日数を超える2年間にも及びました。また、工法についても試行錯誤が重ねられ、1970年の間組による薬液注入工法の注入圧記録では、富士川用水トンネルがMI10-25、MW20-40と、東名蒲原トンネルの約2-4倍に達したと記録されています。これらの困難を乗り越え、富士川用水は完成に至りました。

富士川用水は、その建設の過程で多くの困難に見舞われましたが、地域の農業と工業を支える重要な水資源として、現在もその役割を果たし続けています。

もう一度検索