富士急行5000形電車

富士急行5000形電車

富士急行5000形電車は、1975年に富士急行によって導入され、2019年まで在籍していた電車の一種です。この車両は、3100形の事故による廃車を補うことと、将来的な増備車の試作を目的として日本車輌製造で製造されました。

車両の特徴

2020年時点では、富士急行が自社発注した最後の鉄道車両であり、1976年には地方私鉄として初めて冷房付きの新造車両によって、鉄道友の会ローレル賞を受賞するなど、その意欲的な取り組みが評価されました。形式名の「5000」は、昭和50年に登場したことが由来となっています。

外観のデザイン

この車両の外観は、車体長20,000 mm、最大幅2,950 mmという地方私鉄としては大型の部類に入ります。衝突対策として高運転台構造を採用し、正面下部には耐久性のあるステンレス製のバンパーが装備されていました。車体デザインは、日本国有鉄道（国鉄）の近郊形電車に似ている部分もありますが、フロントデザインは独自のスタイルによって特徴付けられました。初回の塗装は、白帯とオーシャングリーン、サランダブルーのコントラストが印象的でした。

車内の構造

車内には、幅1,300 mmの両開扉が片側に2か所配置され、セミクロスシート形式が採用されています。座席は扉付近にロングシート、扉の間にボックスシートが設けられ、快適な空間を提供しています。特に、クロスシート部分のシートピッチは、国鉄の急行型に比べ大きく、乗客の快適性を考慮した設計となっています。また冷房装置も搭載されており、初めて冷房設備を整えた富士急行の車両でもありました。

機器の詳細

5000形電車は、モハ5001とモハ5002の2両でユニットを組み、さまざまな補助機器がそれぞれの車両に搭載されていました。主制御装置は三菱電機製で、勾配対策として抑速ブレーキや発電ブレーキも装備しており、特に乗車定員の多い条件下でも優れた走行性能を発揮することができました。台車には国鉄DT21形に類似したND-112形を用い、従来の技術を取り入れつつ新たな工夫を凝らした設計がされています。

運用と歴史

5000形電車は、地方私鉄の新製車両として大胆な挑戦でしたが、その後は増備が行われず、結局1編成のみの運用にとどまりました。1980年代から1990年代には、中古のカルダン駆動車が導入されましたが、戦略としては本形式との共通点が見られました。また、車両の塗装は数回変更され、特に『きかんしゃトーマス』や『ゲゲゲの鬼太郎』のキャラクターをデザインに取り入れたことで、観光地向けのアピールを強化しました。

2019年2月23日に行われたさよなら運転をもって引退し、モハ5001は保存され、モハ5002は解体されました。引退後は、富士急行の全車両が他社からの譲渡車となり、新しい車両「トーマスランド20周年記念号」が運行を開始しました。5000形電車は、富士急行の歴史と文化において、重要な位置を占めていたことが伺えます。

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