富士映画

富士映画株式会社

富士映画株式会社は、日本の映画史上にかつて存在した会社です。1950年代に創立され、1962年1月には現在の大蔵映画へと改組されました。大蔵映画の前身にあたる会社です。

略歴と活動

富士映画の設立者である大蔵貢は、サイレント映画の時代には活動弁士として名を馳せ、トーキー映画の時代が到来すると映画館経営へと事業の中心を移していきました。彼は遅くとも1955年（昭和30年）までには富士映画を設立していたとされています。同年、富士映画は丸根賛太郎が監督した『天下の若君漫遊記 前篇 変幻出没の巻 / 後篇 活殺自在の巻』を製作しました。この作品は、当時大蔵貢が取締役を兼務していた日活の配給によって、同年8月9日に公開されています。

同年12月、大蔵貢は新東宝の社長に抜擢されます。この人事に伴い、1956年（昭和31年）以降に富士映画が手掛けた製作物の配給は、新東宝が担うことになりました。

富士映画の経営体制は、大蔵貢が代表取締役社長を務め、彼の実弟で歌手としても知られる近江俊郎（本名：大蔵敏彦）が副社長に就任するというものでした。本社は東京都目黒区芳窪町11番地（現在の同区東が丘1丁目付近）に位置していました。この所在地は、かつて1947年（昭和22年）に今村貞雄らが設立したラジオ映画株式会社が存在した場所であり、ラジオ映画は1953年（昭和28年）1月に、南方映画社を前身とするテレビ映画株式会社に吸収合併されていました。

1960年（昭和35年）、大蔵貢は当時社長を務めていた新東宝から、新東宝第二撮影所を富士映画へ譲渡しました。この撮影所は、戦前は東京発声映画製作所として稼働しており、現在はオークラランドとして知られる場所にあります。同年12月1日、大蔵は新東宝の代表取締役を退任しました。

その後、1962年（昭和37年）1月、富士映画を母体として新たな会社「大蔵映画」が設立されます。この改組に際し、洋画配給を手掛けていた大和フィルムを吸収合併し、大和フィルムの代表であった徳江清太郎を大蔵映画の専務取締役に迎え入れました。新体制となった大蔵映画は、設立された1962年から外国映画の配給事業を開始しました。近江俊郎は、大蔵映画でも引き続き副社長を務め、晩年まで会社を支えました。

会社データ

所在地: 東京都目黒区芳窪町11番地（現在の同区東が丘1丁目あたり）
代表: 代表取締役 大蔵貢
資本金: 6,000万円

おもなフィルモグラフィ

以下は、富士映画が製作・配給した作品の中から一部を抜粋したリストです。1956年以降の作品は、特に記載がない限り新東宝が配給しました。

『天下の若君漫遊記 前篇 変幻出没の巻 / 後篇 活殺自在の巻』 (1955年) - 配給:日活
『剣豪対豪傑誉れの決戦』 (1956年)
『思い出月夜』 (1956年)
『坊ちゃんの逆襲』 (1956年)
『ドライ夫人と亭主関白』 (1957年)
『妖蛇荘の魔王』 (1957年)
『太陽娘と社長族』 (1958年)
『続スーパー・ジャイアンツ 悪魔の化身』 (1959年)
『危険な誘惑』 (1960年)
『トップ屋を殺せ』 (1960年)
『蛇精の淫』 (1960年)
『まぼろし探偵 恐怖の宇宙人』 (1960年)

富士映画の軌跡は、設立者である大蔵貢のキャリアと深く結びついており、新東宝との関わりや、その後の大蔵映画への発展過程は、日本の映画産業における特定の時代の一面を映し出しています。

参照: 日本映画データベース 他

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