大蔵映画

大蔵映画株式会社：日本のピンク映画を牽引する老舗

大蔵映画株式会社は、日本の映画業界において、ピンク映画とゲイポルノの製作・配給で独自の地位を築いてきた老舗企業です。その歴史は、1962年に大蔵貢によって設立されたことに遡ります。設立当初は一般映画も手掛けていましたが、時代の変化とともに成人映画へとシフトし、現在に至っています。

設立から成人映画への転換

1960年、新東宝を退陣した大蔵貢は、自身のルーツである富士映画を母体に大蔵映画を設立しました。当初は『太平洋戦争と姫ゆり部隊』などの一般映画を製作しましたが、興行的な成功には至りませんでした。その後、協立映画製作の『肉体の市場』を配給したことをきっかけに、成人向け映画へと大きく舵を切ります。この転換により、ピンク映画の専門会社としての体制を確立し、独自の配給網「OPチェーン」を組織しました。

ピンク映画専門会社としての発展

大蔵映画は、自社製作から外注作品の配給へとシフトし、成人映画の分野でその存在感を増していきます。1966年には、撮影所の一部を閉鎖し、総合アミューズメント施設「オークラランド」として再開発。これは、同社が映画製作だけでなく、レジャー事業にも進出する先駆けとなりました。その後、外国映画の配給から撤退し、ピンク映画の製作・配給に特化していきます。

経営体制の変遷とゲイポルノへの進出

1978年に大蔵貢が死去した後、息子の満彦が経営を引き継ぎました。1984年末からは、大阪のENKプロモーションと提携し、ゲイポルノ映画の製作・配給にも進出。これにより、成人映画の多様化に対応し、新たな市場を開拓しました。2000年には、東映のシネマコンプレックス運営会社ティ・ジョイに出資し、映画興行の分野にも関与を深めました。

製作・配給部門の分社化と劇場運営

2001年、大蔵映画は製作・配給部門を子会社オーピー映画に分離。これにより、興行部門に専念する体制へと移行しました。直営館の閉鎖や再編も行われ、2010年には上野地区の劇場をリニューアルオープン。老舗映画館としての歴史を繋ぎました。

オーピー映画：大蔵映画のDNAを受け継ぐ子会社

オーピー映画は、大蔵映画から製作・配給部門を引き継いだ子会社です。ピンク映画の製作においては、娯楽性を重視しつつも、実験的な作品にも挑戦。また、若手監督を積極的に起用し、新たな才能の発掘にも貢献しています。ピンク映画だけでなく、ゲイポルノの製作・配給も行い、多様なニーズに対応しています。

大蔵映画の現在

2023年現在、大蔵映画は、オーピー映画と共にピンク映画業界を牽引する存在です。デジタル制作への移行や、R15+再編集版の製作など、新たな試みも行っています。また、自社の作品上映だけでなく、海外の映画祭への出品も積極的に行っています。

主なフィルモグラフィ

製作

『太平洋戦争と姫ゆり部隊』（1962年）
『肉体の市場』（1962年）
『海女の怪真珠』（1963年）
『怪談バラバラ幽霊』（1968年）
『新怪談色欲外道 お岩の怨霊四谷怪談』（1976年）

洋画配給

『女体蟻地獄』（1962年）
『シマロンの女拳銃』（1962年）
『原子怪獣と裸女』（1962年）
『黒猫の怨霊』(1964年)
『姦婦の生き埋葬』(1964年)

映画館

目黒シネマ
オークラシアター（上野）
横浜光音座I・横浜光音座II

かつて経営した映画館

上野パーク劇場
大鳥居オーピー
荻窪スター座
札幌オークラ劇場
福岡オークラ劇場I・福岡オークラ劇場II
上野スタームービー
世界傑作劇場（上野スタームービー内）
日本名画劇場（上野スタームービー内）
上野オークラ劇場（旧）
上野地下特選劇場
東梅田オークラ地下劇場

レジャー施設

オークラランド
新飯田オークラボウル
福島オークラボウル

かつて経営したレジャー施設

伊東オークラボウル
* 小田原バッティングドーム

まとめ

大蔵映画は、日本の映画史において、独自の道を歩んできた企業です。ピンク映画というニッチなジャンルに特化し、独自の配給網を築き上げ、多くの観客を魅了してきました。その歴史は、日本の映画文化の一側面を映し出す鏡とも言えるでしょう。

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