東京発声映画製作所

東京発声映画製作所：トーキー黎明期を彩った映画会社

東京発声映画製作所は、1935年3月に設立され、1941年12月に東宝映画と合併するまで存在した映画会社です。設立当初は日活の資本下で、トーキー映画製作に特化したスタジオとして活動を開始しました。

設立の背景

当時、映画界ではサイレント映画からトーキー映画への移行が進んでいましたが、松竹蒲田撮影所ではトーキー映画の製作がなかなか進みませんでした。これに不満を抱いた重宗務監督は、日活多摩川撮影所に移籍。同じく多摩川撮影所にいた脚本家の八田尚之と共に、新たな映画製作会社を設立することになります。こうして、日活の資本を得て、東京発声映画製作所が誕生しました。

設立初期の活動

設立当初のメンバーには、所長の重宗務、企画脚本部長の八田尚之のほか、カメラマンの持田米彦、俳優の藤井貢、大日方伝、逢初夢子、市川春代、秋田伸一らが名を連ねました。設立第1作は、重宗監督・八田脚本による『乾杯!学生諸君』で、日活の封切館で公開されました。1936年には、豊田四郎監督が入社し、オリジナル脚本による『東京-大阪特ダネ往来』を監督。この頃までは、日活と配給提携を結んでいましたが、1937年からは東宝映画配給に切り替わりました。

自社スタジオの完成と東宝との提携

1937年3月には、自社のトーキースタジオが世田谷に完成。同年5月公開の豊田監督作品『港は浮気風』から、東宝映画配給による配給が始まりました。この時期には、豊田監督の傑作として名高い『若い人』も製作されました。同年9月には、東宝映画配給が4社合併で「東宝映画」となりますが、東京発声映画製作所の配給体制は継続されました。

東宝への吸収合併

1938年には、重宗務が「重宗和伸」と改名し、プロデューサーに転身。豊田四郎監督や阿部豊監督の作品を製作しました。同年には、八田尚之が東宝映画東京撮影所へ移籍し、後任として八木保太郎が製作部長に就任しました。1939年には、文部省の企画で『松下村塾』を製作。1940年からは、豊田監督の傑作『小島の春』など、八木脚本作品が数多く製作されました。しかし、1941年11月7日、豊田監督・八木脚本の『わが愛の記』をもって製作を終え、東宝映画に合併。同社のスタジオは、「東宝映画第三撮影所」となりました。

東京発声映画製作所の特徴

東京発声映画製作所は、トーキー映画の黎明期に、新しい技術に挑戦し、多くの才能を輩出した映画会社でした。重宗務監督、豊田四郎監督、八田尚之、八木保太郎といった才能が集結し、『若い人』や『小島の春』など、日本映画史に残る名作を数多く生み出しました。その短い歴史の中で、日本の映画界に大きな足跡を残したと言えるでしょう。

主な作品

1935年：『乾杯!学生諸君』、『大学を出た若旦那』
1936年：『街の笑くぼ』、『燃えろ!魂』、『東京-大阪特ダネ往来』、『一本刀土俵入』、『大番頭小番頭』、『剣辰旅ごよみ』
1937年：『港は浮気風』、『オヤケアカハチ』、『若旦那三国一』、『波止場やくざ』、『若い人』、『十字砲火』
1938年：『泣蟲小僧』、『太陽の子』、『冬の宿』、『鶯』
1939年: 『松下村塾』
1940年：『奥村五百子』、『小島の春』、『大日向村』
1941年：『大地に祈る』、『女学生記』、『わが愛の記』

関連人物

重宗務（重宗和伸）：監督、プロデューサー
豊田四郎：監督
八田尚之：脚本家
八木保太郎：脚本家、製作部長
藤井貢：俳優
大日方伝：俳優
逢初夢子：女優
* 市川春代：女優

まとめ

東京発声映画製作所は、トーキー映画黎明期に、その発展に大きく貢献した映画会社です。その短い歴史の中で、多くの名作を生み出し、日本の映画史に大きな足跡を残しました。その功績は、今もなお語り継がれています。

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