富山地方鉄道3530形電車

富山地方鉄道3530形電車

富山地方鉄道3530形電車は、1951年に製造された路面電車車両で、富山地方鉄道における重要な存在でした。この車両は、デ3531から3535の5両が日本車輌によって新造され、主に富山軌道線で運行されました。3530形は、車体が新たに作られたものの、機器類はその前のモデルから流用されており、当時の技術の名残をとどめています。

車両は、戦後に作られた中では特に珍しい四輪単車設計を採用しており、ブリル21Eという台車が使用されています。ブレーキシステムには手ブレーキと発電ブレーキが装備されていましたが、空気ブレーキは初めは設置されていませんでした。3533号車は1999年に空気ブレーキを追加されたものの、他の車両はそのままで運行されていました。

車体は全長8メートルのコンパクトで、外装や骨組みは鋼鉄製でありつつ、車内は木材を利用した半鋼製の構造でした。ヘッドライトはその最初、前面窓下中央に1灯ありましたが、1978年には2灯に増設され、同時に側窓もHゴムを使った固定窓に改修されました。さらに、1996年には3533の前面窓がアルミサッシに変更され、より近代的な印象を持たせるようになりました。

集電装置には「Yゲル」と呼ばれるユニークなデザインが採用されており、ビューゲルとトロリーポールの中間的な形態を持っていましたが、後にZパンタに改良されました。3530形電車はその寿命の中で、1966年に3531と3532が引退し、1971年には3535が廃車となるなど、世代交代が起こりました。残る3533号車と3534号車は、1980年代に入ると除雪用としての役割を果たし、自動車との連携で路面の雪かきや凍結防止剤の散布に利用されるようになりました。

1999年に3534が廃車となり、翌年には3533が書類上、機関車扱いに変更されましたが、2008年にはその運命も尽き、最終的に廃車・解体されて形式は消滅しました。このように3530形電車は、富山の公共交通において長い間愛され、さまざまな役割を担ってきた歴史を持った車両です。

参考文献

• - 『ローカル私鉄車両20年 路面電車・中私鉄編』（JTBパブリッシング・寺田裕一） ISBN 4533047181
• - 『路面電車新時代 LRTへの軌跡』（山海堂・服部重敬） ISBN 4381018168
• - 『復刻版私鉄の車両10 富山地方鉄道・加越能鉄道』（ネコ・パブリッシング・飯島巌・西脇恵・諸河久） ISBN 4873662931

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