富沢町

富沢町（とみざわちょう）

富沢町は、かつて山梨県南巨摩郡に存在した町です。2003年3月1日に南部町と合併し、その歴史を閉じました。町の名前は、合併前の富河村と万沢村から一文字ずつ取って名付けられました。

地理

町の地理的な特徴として、山梨県の南西端、南巨摩郡の南端に位置していました。町の大部分は山林で、自然豊かな場所でした。町の北東端には富士川が流れ、その傍らを国道52号が通っていました。南部町、そして赤石山脈を挟んで静岡県静岡市や富士郡芝川町と隣接しており、静岡方面への通勤者も多く、文化的な繋がりも深い地域でした。

歴史

先史・古代

富沢町の歴史は非常に古く、旧石器時代から人々の生活が営まれていました。富士川流域は、八ヶ岳山麓と並び、県内でも旧石器時代の遺跡が多く見つかる地域です。特に万沢にある天神堂遺跡は、旧石器時代のナイフ形石器や、石焼き調理に使われたとされる礫群が発見され、重要な遺跡として知られています。古代には、律令制のもとで巨摩郡川合郷に比定される地域でした。

中世

平安時代後期には、甲斐源氏の一族が各地に進出し、富沢町域の南部郷には南部氏が拠点を築きました。南部氏はその後、陸奥国へと移住しましたが、この地に残った河内南部氏の動向は戦国時代まで続いています。戦国時代には、甲斐国守護であった武田氏の一族である穴山氏が河内地方に進出し、河内南部に残っていた河内南部氏を駆逐し、河内領を統一しました。当時の甲斐国は、守護武田氏や穴山氏といった有力国衆、そして他国の勢力が複雑に関係し、混乱した状態にありました。穴山氏は一時、駿河の今川氏に従属し、武田氏に対抗していましたが、後に武田氏に従属し、家臣団となりました。1535年には武田信虎が駿河攻めを行い、富沢町域でも合戦が発生しています。富沢町域は河内地方の最南端に位置し、甲斐と駿河の国境に近かったため、万沢口には口留番所が置かれ、穴山氏家臣の屋敷跡や、駿州往還（河内路）の宿場などが分布していました。福士には、狼煙台であったとされる真篠砦も存在していました。

近世・近現代

近世には、巨摩郡西河内領として、3つの村が成立しました。万沢には口留番所が置かれ、対岸の南部を結ぶ渡舟場があり、江戸時代から明治初期にかけては富士川水運で栄えました。河内地方は山間部で耕地は少なかったものの、温暖多雨な気候と豊かな森林資源に恵まれており、林業が主要な産業でした。また、三椏や楮を栽培して紙漉きも盛んに行われていました。戦後には観光業が盛んになり、タケノコの産地や茶栽培でも知られるようになりました。

沿革

1955年（昭和30年）2月11日 - 富河村と万沢村が合併し、富沢町が発足。
2003年（平成15年）3月1日 - 南部町と合併し、新たに南部町が発足。同日、富沢町は廃止。

文化財

富沢町には、歴史的に価値の高い文化財がいくつか存在します。福士にある最恩寺仏殿は、室町時代に建てられた入母屋造の禅宗様建築で、厨子や棟札とともに国の重要文化財に指定されています。また、最恩寺が所蔵する絹本穴山勝千代画像は、県指定文化財です。その他、福士の金山神社のイチョウや、顕本寺のオハツキイチョウは、県指定天然記念物となっています。

関連項目

* 山梨県の廃止市町村一覧

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