富谷宿

富谷宿

奥州街道において、江戸から数えて七十二番目に位置する宿場、それが富谷宿です。現在の宮城県富谷市富谷新町界隈に位置し、江戸時代初期、元和四年（西暦一六一八年）に開かれ、地域の中心として重要な役割を果たしました。

歴史

江戸時代の初め、慶長五年（一六〇一年）、仙台藩の藩祖である伊達政宗公が仙台の地に城と城下町の建設に着手したことにより、奥州街道のルートは大きく変更されました。特に仙台以北の経路が見直され、富谷の地を通るようになったのです。この新しい経路では、次の宿場である吉岡宿までの距離が長くなったため、街道を行き交う大名や旅人の休憩・宿泊のために新たな宿場の設置が求められました。

吉岡黒川氏の家老を務めていた内ヶ崎筑後は、伊達政宗公よりこの新しい宿場の開設を命じられました。そして、元和四年（一六一八年）に富谷宿が誕生しました。開設当初は小規模ながら、短期間で戸数は増加し、元和六年（一六二〇年）には正式に富谷宿として発足が認められました。内ヶ崎家は宿場の管理責任者である検断と、大名などが宿泊する本陣を任され、その発展に尽力したと伝えられています。

参勤交代を行う奥州地方の諸藩や、遠く松前藩（現在の北海道）の大名なども富谷宿を利用し、本陣は代々内ヶ崎家が務めました。宿場は次第に賑わいを増し、天保十三年（一八四二年）頃には、旅籠はもちろん、呉服屋、酒屋、醤油屋など、実に二十五種類に及ぶ業種、七十五軒もの店舗が街道沿いに軒を連ねていたと記録されています。これは、当時の富谷宿がいかに商業的に活況を呈していたかを示しています。

近年では、開宿から四百年を迎えた平成三十年（二〇一八年）十月十三日には、記念行事として富谷宿「街道まつり」が開催され、地域の歴史を振り返る機会となりました。

現在の様子と観光

現在の富谷市しんまち地区に、当時の富谷宿の面影が残されています。「しんまち通り」（宮城県道二五六号線）沿いには、往時を偲ばせる旧家が軒を連ね、歴史的な町並みが広がっています。かつては富谷新町宿とも称され、江戸期を通じて宿場としての役割を果たしました。この界隈には、かつて本陣を務めた内ヶ崎家があります。本陣跡の近くには「恋路の坂」と呼ばれる坂があり、この坂を上ると茶畑が広がっています。かつてこの一帯では茶の栽培が盛んに行われ、富谷茶として広く知られていました。一九七〇年（昭和四十五年）を最後に栽培が途絶えていましたが、二〇二〇年（令和二年）には富谷茶の復活を目指して栽培が再開され、地域の新たな取り組みとして注目されています。

宿場町の歴史を体感できる拠点として、近年、内ヶ崎作三郎の生家を大規模に改修した観光交流施設「富谷宿観光交流ステーション」（愛称：とみやど）が二〇二一年春に開業しました。施設内には内ヶ崎家の歴史を紹介する記念館も併設されており、富谷宿の歴史や文化に触れることができます。

周辺観光地

恋路の坂
しんまち公園
富ヶ岡公園
南川ダム
宮床ダム
七ツ森湖畔公園
あさひな湖畔公園
内ヶ崎酒造店
原阿佐緒記念館
大亀山森林公園
内ヶ崎家別邸

祭り・イベント

毎年八月の中旬には、地域のお祭りである「とみやふるさとまつり」が開催され、多くの人で賑わいます。

アクセス

東北自動車道 泉インターチェンジから車で約十五分
* 仙台北部道路 富谷インターチェンジから車で約五分

駐車場は、富谷市福祉健康センターの南側に大規模な無料駐車場が利用可能です。また、内ヶ崎家別邸の南側脇にも「しんまちめぐり」用の無料駐車場があり、普通車七台まで利用できます（午前九時から午後五時まで）。

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