検断

検断（けんだん）とは

「検断」は、中世の日本において、主に治安維持や刑事裁判に関連する一連の職務や権限を指す言葉です。具体的には、犯罪の捜査から逮捕、取調べ、裁判、そして判決の執行に至るまでのプロセスを含みます。元々は「検察」と「断獄」という言葉を組み合わせたものであり、不法行為を調査してそれを裁く行為を示しています。

検断の権限とその変遷

中世の日本において、検断に関する権限を持つ者は「検断権」と称され、その権限のもとで行われる訴訟は「検断沙汰」と呼ばれました。また、検断権を行使する職業は「検断職」として認識されるようになりました。さらに、権力の変遷によって、その実務を行う者や機関の呼称も様々に変化していきました。江戸時代には、村役人が「検断」または「検断肝煎」として知られることもありました。

平安時代には、朝廷が与えていた「検非違使庁」や「国衙」の権限が主流でした。重科（重大犯罪）が発生した場合には、追捕使を設置することもありましたが、12世紀に入ると、荘園が独自に検断権を行使するケースが増加しました。平氏政権の成立に際しては、平家一門が国内での守護権を得て検断権を行使しました。この流れを受けて源頼朝は自身の軍事的権限をもとに、新たな幕府を組織し、検断を実施しました。

鎌倉幕府は当初、検断権の運用を守護や地頭に任せられていました。しかし、朝廷は軍事力を欠いていたため、その権限を有効に行使することができませんでした。これにより、細分化された権力の中で、検断の権利を巡る争いが生じるようになりました。基本的に、検断権の対象となるのは、謀叛や殺害、強盗などの重大な犯罪であり、内容は権限の行使者によって異なることもありました。

武家による検断

鎌倉幕府における検断の実務は、主に侍所、守護、地頭によって行われました。侍所は広域的な治安維持と刑事事件の裁判を担当し、守護は国内で発生した重大な犯罪を追捕する役割を果たしました。地頭は荘園においても検断権を代行し、軽微な事件の処理も担当しました。しかし、幕府とは異なる特権を持つ本所領域においては、幕府の検断権が及ばないこともあり、複雑な権力関係が形成されました。

室町幕府となると、侍所は京都を拠点に治安を維持し、朝廷の検非違使庁はその権限を失っていきました。また、国人たちが独自の検断権を行使するケースも増えていき、戦国時代には地域の武士たちが新たな権力者として台頭しました。

本所・在地の検断

寺社や公家もそれぞれの所領や境内において検断権を持ち、重大な犯罪に対しては検非違使庁への引き渡しが行われることとなりました。地方では、荘官たちが検断権を持ち、時には本所が独自の追捕を行うこともありました。このように、中世日本の検断は、様々な権力者や地域の特性によって影響を受けつつ、犯罪の取り締まりや社会の秩序維持に大きな役割を果たしていました。

村落においては、惣村が形成され、自らの成文法に基づいた検断権を行使するようになりました。この背景には、全ての人々が武装していた中世社会の特性があり、村落が独自に検断権を行使する条件が整っていたと言えます。

まとめ

「検断」は中世の日本社会において、治安維持や犯罪裁判の基盤を形成する重要な概念であり、歴史の中でその権限や役割が変化し続けたことを示しています。この制度は、当時の人々の生活や権力関係に深く根付いていました。

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