富貴楼お倉

富貴楼お倉について

富貴楼お倉（ふうきろうおくら）は、1837年1月30日に生まれ、1910年9月11日に亡くなった日本の芸者であり実業家です。本名は斎藤くらであり、彼女は花柳界の中で特異な存在感を放った女傑として名を馳せました。確固たる地位を築いた彼女の人生は、浮き沈みの多いものでしたが、彼女の生涯は日本の近代史にも深く関わっています。

略歴

お倉は江戸、現在の浅草松葉町に生まれました。父親は鳶職の浅井丑之助であり、祖父は新門辰五郎の兄弟分として知られる侠客でした。幼少期、彼女の家族は離散し、その後は浅草の水茶屋で働くことになります。その際、彼女は新門辰五郎の子分である斎藤亀次郎と恋愛関係に発展し、駆け落ちを果たします。その後、新宿中丁にある豊倉という店で飯盛女郎として働くことになりました。

お倉は見た目が美人とは言えなかったものの、豊かな愛嬌で多くの人々に支持されました。しかし、彼女の生活は亀次郎の借金の取り立てに苦しむ日々でもありました。1868年には経済が活況を呈していた大坂に移り、芸者としての生活を送りますが、その後関東に戻り、横浜で新たな生活を始めました。

1871年には、縁あって生糸や洋銀の取引を通じて富を築いた田中平八から資金援助を受け、相生町に料亭「富貴楼」を開業しました。1873年には、運の悪いことに火事で店舗が焼失するも、常連客たちの支えにより、横浜市中区尾上町で営業を再開することができました。富貴楼はその後、大久保利通や伊藤博文、井上馨など政治の重鎮たちの集う場となり、その影響力を強めました。

著名な作家樋口いく子は富貴楼お倉に関して、「近代国家・日本の政治装置を形成した重要な場所である」と述べています。お倉の料亭は、単なる食事の提供を超え、政治家たちが集い、意見を交わす場として重要視されるようになりました。

晩年

お倉の晩年は、糖尿病に苦しまれ、神奈川県大磯の招仙閣で過ごしていた時期に脳溢血で亡くなりました。彼女には、タケとハナという二人の娘が残されました。お倉の墓所は横浜市西区赤門町にある東福寺にあり、周囲は石塀で囲まれた静かな場所に位置しています。その墓石にはお倉と亀次郎の戒名が刻まれ、彼らの没年月日も記されています。

人物像

お倉は客をもてなす方法として「客の手が三つ鳴ったら料理を辛くする」とのルールを設けていました。江戸っ子にとって、手を三つ鳴らすのは神に拝礼する行為であり、二つで女中を呼ぶ際のサインとされていました。三つ手を鳴らす客は田舎から来た客で、そのため料理は濃い味付けで提供されるよう工夫されていたといいます。

富貴楼お倉の人生は、戦後日本の飲食文化や政治の流れにおいて、重要な一ページを刻んでいます。彼女の名は、今もなお多くの人々に語り継がれ続けています。

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