寺内正道

寺内正道：不沈艦『雪風』の艦長

寺内正道（てらうち まさみち、1905年-1978年）は、旧日本海軍の軍人で、最終階級は海軍中佐でした。太平洋戦争において、駆逐艦『雪風』の艦長として多くの海戦を経験し、その艦の無傷の帰還から「不沈艦の名艦長」と呼ばれました。

輝かしい経歴と数々の激戦

1905年、栃木県に生まれた寺内は、海軍兵学校を卒業後、順調にキャリアを積みました。1940年には第十四号掃海艇の艦長に就任。そして1943年、運命の艦『雪風』の艦長に任命されます。

『雪風』艦長としての寺内は、数々の激戦を生き抜きました。その中でも特に有名なのは、レイテ沖海戦における活躍です。この海戦では、アメリカ海軍の駆逐艦ジョンストンが沈没する際に、敵艦でありながら生存者に対して敬礼する姿が目撃され、アメリカ側の記録にも残されています。このエピソードは、寺内の高い人間性と、敵味方を超えた敬意を物語っています。

1944年11月には、戦艦『長門』の護衛任務の後、空母『信濃』の護衛任務に就きます。しかし『信濃』はアメリカ潜水艦の雷撃を受け沈没。その後も、沖縄特攻作戦に参加し、激戦を戦い抜きました。沖縄戦後、呉鎮守府に所属し、呉特別防備隊司令として終戦を迎えます。

戦後の人生と著作

終戦後、寺内は公職追放を経て、専売公社に勤務しました。戦時中の経験から、彼は海軍駆逐隊の戦闘や編成について深い知識を持っていました。晩年には、自身の経験に基づいた著作『海軍駆逐隊』を執筆しました。この本は、太平洋戦争下の海軍駆逐隊の活動や実態を詳細に記述した貴重な資料であり、現在も高い評価を得ています。

静かな最期

1978年1月19日、東京都狛江市の病院で、回盲部腫瘤のため72歳で亡くなりました。その生涯は、海軍軍人としての華々しい活躍だけでなく、戦後の苦労や、自身の経験を後世に伝えるための努力に満ちたものでした。

『雪風』と寺内正道

『雪風』は、数々の海戦を経験しながら一度も損傷を受けなかった、奇跡的な駆逐艦として知られています。その幸運の影には、寺内正道を含む乗組員の卓越した航海術、そして彼らが持つ類まれな戦闘能力があったと言えるでしょう。寺内は、『雪風』という艦と共に、日本海軍の歴史に名を残す存在となりました。

参考文献

寺内正道 ほか 著『海軍駆逐隊』潮書房光人社、2015年
秦郁彦 編『日本陸海軍総合事典』（第2版）東京大学出版会、2005年
Cutler, Thomas J. (1994) The Battle of Leyte Gulf 23-26 October 1944*. HarperCollins.

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