寺崎白壁塚古墳

寺崎白壁塚古墳について

寺崎白壁塚古墳（てらさきしらかべづかこふん）は、奈良県高市郡高取町寺崎に存在する方墳の一つです。この古墳は与楽古墳群を形成する重要な要素であり、国の史跡にも指定されています。

位置と構造

奈良盆地の南端に広がる貝吹山丘陵から南方に延びる尾根の南斜面に築かれており、周囲には約100基の古墳が点在しています。寺崎白壁塚古墳は、与楽鑵子塚古墳や与楽カンジョ古墳と並び、北から南に配置されています。発掘調査は1996年から2002年にかけて行われました。

この古墳の規模は、最高で東西約90メートル、南北約60メートルにも達すると考えられています。墳丘は2段に築かれており、その形状は方台形として認識されている一方、八角形である可能性も指摘されています。墳丘の最大のサイズは、南辺35メートル、北辺20メートル、南北28メートル、高さは約9メートルです。特に墳丘の北側背面には、幅6メートル、深さ2メートルの掘割が設けられており、南側前面には2段のテラスがあります。このような構造は段ノ塚古墳に見られる形式で、終末期古墳の特長として注目されています。

埋葬施設の詳細

埋葬施設には横口式石槨が使用され、南方向に開口しています。石槨の長さは10.9メートルで、構造的には前室、羨道、石槨部が接続してつながっています。石槨は閃緑岩でできており、各面には大きな石を組み合わせ、隙間には漆喰が充填されていますが、扉石は失われてしまっている点が哀しいところです。

石槨の内部は盗掘に遭い、多くの副葬品が失われています。調査によって、鉄釘やミニチュア炊飯具、土師器平底甕などが確認されました。また、前室からは12世紀後半の瓦器や土師皿も出土しており、時代を越えた貴重な証拠となっています。格子状に配置された石槨の形態は、他の地域の古墳とも類似しており、その関係性が注目されています。

歴史的な背景

古墳の築造時期は、7世紀中葉、古墳時代の終末期に位置付けられています。与楽古墳群の中で、寺崎白壁塚古墳や与楽鑵子塚古墳、与楽カンジョ古墳は、この地域における首長の墓と考えられています。

古墳の歴史も深く、10世紀から11世紀の間には掘割の再掘削が行われ、12世紀後半には中世の墓として再利用されることがありました。近代には1893年に報告書が作成され、1987年には重要な調査が実施されました。2002年には、高取町指定史跡に登録、2013年には与楽古墳群として国の史跡に指定されています。

現在の状況

現在、寺崎白壁塚古墳は公開されており、訪問者がその歴史を感じられるように整備されています。ただし、石槨内部への立ち入りは制限されています。さらに、古墳の下方には横穴式石室墳の白壁山2号墳も存在し、考古学的な価値が高い地域となっています。これらの古墳群は、奈良時代の文化や信仰、社会のあり方を知る貴重な手がかりとして、今後も多くの研究が期待されています。

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