寺本廃寺

寺本廃寺（てらもとはいじ）について

寺本廃寺は、山梨県笛吹市春日居町寺本に位置する古代寺院の遺跡で、創建は7世紀後半、つまり飛鳥時代の後期に遡ると考えられています。この寺院は「甲斐寺本廃寺」とも呼ばれており、最近では「寺本古代寺院跡」という名称が一般的となっています。

位置と歴史的背景

寺本廃寺は、甲府盆地の北縁部に位置し、鳳山川と西川の間の微高地に築かれています。この地域は古代甲斐国の中でも重要なスポットであり、特に春日居古墳群や初期国府遺跡が集中しています。仏教が日本に伝わったのは6世紀半ば頃であり、この寺院もその流れの一環として考えられています。

甲斐国における古代寺院の中で、寺本廃寺は特に重要な位置を占めており、その存在は当時の仏教文化がこの地に深く浸透していたことを示しています。さらに、同時期に発見された天狗沢瓦窯跡の古代瓦や、横根町の東畑遺跡からの出土品も、仏教文化の影響を裏付けています。寺本廃寺の創建者は明確にはわかりませんが、大伴氏がその可能性の一つとして提起されています。

寺本廃寺の性格

寺本廃寺の性格については、長い間さまざまな仮説が存在しました。初期国分寺、国分尼寺、郡寺、氏寺、さらには国府附属寺院など、研究者の間で異なる見解が示されてきましたが、現時点では、春日居古墳群の有力首長の氏寺または国府に付属する寺院として認識されています。江戸時代には国分尼寺と考えられていたものの、1938年に行われた研究によって否定されました。

発掘調査と遺構

1950年には石田茂作が寺本廃寺の中央東部にある塔心礎付近を発掘調査し、その成果が公表されました。その後、1980年代には春日居町教育委員会によるさらなる発掘調査が行われました。発見された遺構は、塔跡から確認された塔心礎や、講堂、金堂、塔などが含まれています。また、寺域は130メートル四方で、中央北には現在の山王神社が位置しています。

遺物の出土

出土された遺物は多岐にわたり、特に瓦類が目立ちます。平瓦、丸瓦、軒丸瓦などが出土しており、それぞれが異なる様式に分類されています。中でも、文様が施された軒丸瓦や、「五千四百」と記された文字瓦などが存在し、その時代の特色を示しています。また、土器も弥生時代から多く出土し、寺域内では10世紀のものが、寺域外からは11世紀以降のものが見つかっています。

現在の状況

寺本廃寺の出土資料は、春日井郷土館や山梨県立考古博物館に収蔵されています。中でも出土瓦の一部は、山梨県立博物館にて常設展示されています。寺本廃寺の研究は今なお続けられており、古代甲斐国における仏教の動向や、その文化的背景についての理解を深める貴重な資源となっています。

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