寺沢広高

寺沢広高

寺沢広高は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将・大名であり、肥前国唐津藩の初代藩主です。尾張国に生まれ、豊臣秀吉に仕えて肥前国唐津6万石を与えられ、従五位下志摩守に叙任されました。文禄・慶長の役では軍功を挙げ、筑前国怡土郡に2万石を加増されています。

生涯

豊臣秀吉の家臣として

広高は、秀吉の家臣として頭角を現しました。文禄の役では、朝鮮へ出兵し、その武勇を認められています。また、彼はキリシタンとしても知られており、文禄3年から翌年にかけて洗礼を受けましたが、後に棄教し、キリシタン弾圧に転じています。この態度の変化には、キリスト教への信仰心というより、政治的な思惑が働いていたと考えられています。

関ヶ原の戦いと徳川家康への接近

秀吉の死後、広高は徳川家康に接近し、慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは東軍に与しました。その戦功により、天草4万石を加増され、合計12万石を領する大名となりました。広高は、豊臣政権下では秀吉の取次ぎ役を務めていましたが、徳川政権下では家康の取次ぎ役となり、その公的地位を確立しました。九州の大名との繋がりや、長崎代官としての経験から、海外貿易に関心を持っていた家康にとって、広高は重要な人物でした。関ヶ原の戦い後、広高は家康と西軍であった島津氏との交渉を仲介しましたが、次第に取次役としての役割は家康の家臣に譲られ、その権力は失われていきました。

唐津藩主として

広高は唐津城を築城し、天草の飛地を含む12万3千石を領有する大名となりました。天草領を統治するために富岡城を築き、城代や代官を派遣して統治を行いました。唐津や天草の土着豪族を弾圧し、その結果、唐津は安定し、繁栄を迎えました。当初、キリシタンに対して弾圧を積極的に行っていませんでしたが、慶長19年（1614年）の禁教令以降は、厳しく棄教を迫り、晩年には拷問を用いるようになったと言われています。

死去

寛永10年（1633年）4月11日、広高は71歳でこの世を去りました。墓所は唐津市鏡の鏡神社境内にあり、地元では「志摩様」として親しまれ、毎年春には桜の花見の時期に小宴が催されています。

逸話

島原の乱との関わり

広高は、関ヶ原の戦いの戦功として肥後天草を加増された際、天草の石高を実際よりも過大に算定しました。この過大な石高が、後の徴税を過酷にし、広高の死後、嫡子である寺沢堅高の代に島原の乱（1637年 - 1638年）を引き起こす一因となりました。乱後、寺沢家は責任を問われ、天草領は没収され、失意のうちに堅高は自殺し、寺沢家は断絶しました。しかし、幕府が過大な石高を半減することを認めるまでには、万治2年（1659年）まで時間を要し、寛文11年（1671年）には、天草は私領には適さないとして幕府直轄領となりました。

系譜

父：寺沢広政
母：不詳
正室：妻木貞徳娘
長男：寺沢忠晴（1600-1622）
次男：寺沢堅高（1609-1647）
生母不明の子女
女子：戸川正安正室
女子：久昌院 - 榊原忠次継室
女子：水谷勝隆継室

参考文献

松田毅一『キリシタン研究』（風間書店、1975年）
宮本義己「内府（家康）の公儀掌握と関ヶ原合戦」（『大日光』76号、2006年）
水野伍貴 著「秀吉死後における家臣間の対立構造と推移」（渡邊大門 編 『戦国・織豊期の諸問題』歴史と文化の研究所、2018年）
安高啓明「寺沢広高」（五野井隆史監修『キリシタン大名―布教・政策・信仰の実相―』宮帯出版社、2017年）
『名将言行録』

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