榊原忠次

榊原忠次：二つの名門を繋いだ大名

榊原忠次（さかきばら ただつぐ）は、江戸時代前期に活躍した譜代大名であり、大政参与も務めました。彼は初め大須賀家を継ぎ、後に榊原家を継承するという、特異な経歴を持っています。遠江横須賀藩主、上野館林藩主、陸奥白河藩主、そして播磨姫路藩主として、各地で領地経営に手腕を発揮しました。榊原家3代当主。

生涯

忠次は、大須賀忠政の長男として生まれました。母が徳川家康の姪であったため、忠次一代に限り松平姓を許されるという特別な計らいを受けています。3歳で父の死により、祖母の生家である大須賀家を相続し、遠江横須賀藩6万石を領しました。この時、家康の配慮により安藤直次が後見人となっています。

その後、叔父にあたる榊原康勝に子がなかったため、徳川四天王の一人である榊原康政の血統が絶えることを懸念した家康の命により、10歳で榊原氏館林藩10万石を相続することとなりました。一説には、忠次自身の希望によるものとも伝えられています。これにより、大名としての家は絶家となりました。

大須賀氏の領地は榊原家に吸収されることなく幕府に返上され、家臣団も解雇されましたが、一部の家臣は3割加増の上で榊原氏の家臣に編入されています。忠次の擁立に功績があった榊原家の3人の家老は、江戸幕府より「御付人」としてそれぞれ1千石を与えられ、榊原家からの知行とは別に子孫に継承することが許されました。

正保4年（1648年）には、奥平昌能と共に幼少の徳川家綱の傅役を仰せ付けられました。その後、白河藩14万石を経て姫路藩15万石に国替えとなり、寛文3年（1663年）には保科正之の推挙により、井伊直孝の死後に空席となっていた幕府の御太老職（大政参与）に迎えられました。

万治2年（1659年）には、加古川の流路改変工事を実施し、「升田堤」を構築しました。姫路では新田開発を指揮する一方で、和歌や百人一首を嗜むなど、文化的な活動も行っています。

経歴

1605年（慶長10年）：誕生
1607年（慶長12年）：大須賀家を相続
1615年（元和元年）：榊原家を相続
1643年（寛永20年）：陸奥白河へ国替え
1648年（慶安元年）：喜連川昭氏の後見役となる
1649年（慶安2年）：播磨姫路へ国替え
1663年（寛文3年）：大政参与に就任
1665年（寛文5年）：死去

官位位階

1616年（元和2年）：従五位下 式部大輔
1626年（寛永3年）：従四位下
1663年（寛文3年）：侍従

墓所

榊原忠次の墓所は、増位山随願寺にあります。子の政房によって建てられた墓所には、忠次の事績を刻んだ碑文が残されています。この碑文は、幕府の儒学者である林鵞峰によって作成されました。

系譜

父：大須賀忠政
母：祥室院（松平康元の娘）
正室：徳姫（黒田長政の次女）
継室：久昌院（寺沢広高の娘）
子女：榊原小平太、榊原政房

榊原忠次は、大須賀家と榊原家という二つの名門を受け継ぎ、その才能を遺憾なく発揮した人物でした。彼の生涯は、徳川幕府初期の大名家のあり方や、幕府の政策を理解する上で貴重な事例と言えるでしょう。

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