対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件

対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件

1987年12月9日、日本の領空において発生した対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件は、日本の航空自衛隊史上初の警告射撃が行われた重要な出来事です。この事件は、沖縄本島およびその周辺、特に沖永良部島と徳之島の上空で起こりました。ソビエト連邦のTu-16偵察機が日本の領空を侵犯したため、航空自衛隊のF-4戦闘機が出動し、警告射撃を実施しました。

事件の経緯

1987年12月9日、午前11時ごろ、ソ連の偵察機が日本の防空識別圏に侵入しました。これを受け、那覇基地に配備されていた第302飛行隊のF-4EJ戦闘機2機がスクランブル発進しました。ソ連機の多くは針路を変更したものの、Tu-16P 1機が沖縄本島上空に接近しました。午前11時24分、航空自衛隊はこの機に対して警告射撃を行いました。

1回目の警告射撃が実施されたとき、ソ連機は一旦領空から離脱しましたが、午前11時41分頃に再び領空侵入しました。そのため、2回目の警告射撃が行われました。この時、日本政府はソ連政府に対して抗議を表明し、ソ連側は悪天候と計器故障による事故だと説明しました。

警告射撃の詳細

今回の警告射撃は、実弾と曳光弾を使った信号射撃という形で行われました。具体的には、編隊のリーダー機が侵犯機と並行飛行しながら、発射を行い、視覚信号を用いて「退去」を指示しました。この過程で、航空自衛隊は領空侵犯された際の警告射撃を数回にわたり実施し、多くの弾薬を発射したとされています。

事件の結果、ソ連機は北朝鮮の平壌に着陸しました。サイドの発表によると、この事故は悪天候のために起こったとのことでしたが、当時の天気は晴れであり、防衛局長はこれを非常に悪質な行為と見なしていました。

政府の対応

事件発生から間もなく、日本政府は外務省を通じてソ連に抗議文を提出しました。竹下登首相は、この事件が中距離核戦力全廃条約が締結された直後であることから遺憾に思っている旨を表明しました。また、12月10日には外務省の長谷川局長がソ連大使を招致し、事実関係の調査と責任者の処罰を求めました。ソ連側からは、悪天候による航法装置の不具合の主張がなされましたが、事件に関する日本の抗議に対しては、ソ連も搭乗員に対する処分を発表しました。

その後の影響

この事件は、ソ連軍による領空侵犯がこれまでに何度も発生していた歴史を持つ中で特に注目すべき出来事となりました。また、事件の後、1番機のパイロットであったA一等空尉は、翌年の訓練中に事故で殉職するという不幸な結末を迎えました。

この警告射撃事件は、日本とソ連の軍事的な緊張関係を象徴するものとして記憶されており、今後の防空政策や国際関係にも影響を与える可能性がある重要な事案でした。

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