対潜迫撃砲

対潜迫撃砲とは

対潜迫撃砲（Anti-submarine mortar）は、潜水艦を攻撃するための兵器として用いられる迫撃砲システムの総称です。日本の防衛庁規格では、対潜弾の投射器材を「対潜弾投射機（projector）」と規定しています。

対潜弾

対潜弾とは、爆雷のうち、発射薬の点火によって水上艦艇から発射され、空中を飛翔するものを指します。初期の爆雷は、単に軌条などから海中へ転げ落とされるだけでしたが、第一次世界大戦後半には臼砲式の投射機が実用化され、艦の横に向けて爆雷を投射することで、潜水艦をより広範囲に攻撃できるようになりました。

しかし、水上艦艇が装備するアクティブソナー（探信儀）の探知範囲は水平方向に広いものの、艦の直下への探知能力は極めて低く、攻撃直前に水上艦艇が潜水艦の上に到達した際に目標を見失うという問題が残されていました。

この問題を解決するために、爆雷を前方に投射する「前投兵器（Forward-throwing / Ahead-throwing weapon）」が求められるようになりました。その先駆けとなったのが、1942年にイギリス海軍が装備化したヘッジホッグです。ヘッジホッグは、対戦車用のブラッカー・ボンバードをもとにしたスピガット・モーターを多連装に配したものでした。

その後、炸薬量の向上やソナーの精度向上に伴い、ストークス・モーター式の大口径迫撃砲を少数門束ねて用いる方式へと転換し、スキッドやリンボーといった兵器が実用化されました。

アメリカ海軍は、第二次世界大戦中に使用された各種対潜兵器の撃沈力について、攻撃誤差の分布と支配容積をもとに以下の表のように見積もっていました。

対潜ロケット弾

対潜ロケット弾は、飛翔にロケット推進を用いる対潜兵器です。1950年代には、アメリカ海軍でウェポン・アルファが装備化され、海上自衛隊でも導入されました。また、スウェーデンで開発されたM/50 375mm対潜ロケット発射機は、スウェーデン海軍だけでなく、フランスやドイツ、オランダなどヨーロッパ諸国、そして海上自衛隊にも導入され、対潜兵器としてのロケット発射機の代名詞となりました。

対潜ロケット弾の能力は、基本的に潜望鏡深度までの潜水艦攻撃に限られており、潜水艦の潜航能力が向上するにつれて、使用頻度は減少していきました。しかし、東側諸国では、対潜ロケット発射機が広く運用され続けています。

代表的な機種

ヘッジホッグ: イギリス海軍が開発した多連装の対潜迫撃砲。
スキッド: ストークス・モーター式の対潜迫撃砲。
リンボー: スキッドの後継として開発された対潜迫撃砲。
ウェポン・アルファ: アメリカ海軍が開発した対潜ロケット弾発射機。
M/50 375mm対潜ロケット発射機: スウェーデンで開発された対潜ロケット弾発射機。

脚注

注釈

特になし

出典

Sternhell, Charles M.; Thorndike, Alan M. (1946), Antisubmarine Warfare In World War II
Polmar, Norman; Whitman, Edward (2016), Hunters and Killers: Anti-Submarine Warfare from 1943, Naval Institute Press
多田智彦「現代の艦載兵器」『世界の艦船』第986号、海人社、2022年12月。
弾道学研究会 編『火器弾薬技術ハンドブック』防衛技術協会、2012年。
野木恵一「兵器 (特集・ASWのすべて) - (対潜艦艇・航空機・兵器の歩み)」『世界の艦船』第671号、海人社、2007年3月。
防衛庁『防衛庁規格 水中武器用語』2006年。

参考文献

上記の出典と同じ

関連項目

対潜ミサイル

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