寿 (将棋)

寿（ことぶき）

『寿』は、江戸時代の将棋界で名を馳せた棋士、伊藤看寿によって作られた詰将棋の作品です。特にこの作品は、611手という非常に長い手数が特徴で、当時としては類を見ない傑作となっています。

概要

作品の中では、竜王が玉将を徹底的に追い立てる「竜追い」という技法が用いられています。また、持駒を変化させる「持駒変換」や、盤上のある駒が消える「置駒消去」といった複合的な手法が組み合わさることで、驚くべき611手の長手数を実現しています。この作品は、見る者を引き込む魅力に溢れています。

歴史

伊藤看寿は1755年、幕府に詰将棋作品集『将棋図巧』を献上しました。その中に収められた作品は全100点であり、最終作がこの『寿』です。611手という超長手数は、当時の棋士や愛好者に衝撃を与え、200年以上の間、詰将棋の最長手数記録を維持しました。1955年にこの記録が打ち破られるまで、詰将棋界での金字塔としての地位を誇っていました。

鑑賞方法

『寿』の全手順を記載することは大変繁雑になるため、主要なポイントに絞って説明を行います。詳細な手順が知りたい方には、外部サイトでの鑑賞をお勧めします。

手順の解説

序盤

序盤では、初手▲4六竜から始まり、玉を左辺へと追い詰めていきます。玉方には8四に香がいるため、途中で捨て駒を活用しながら、どんどんと玉を追い立てる手法が印象的です。1筋の二歩解消をテーマにした手順が、この作品特有の面白さを生み出しています。

中盤

持駒が「銀と桂」となり、中盤に差し掛かると、玉を左辺へまた追い詰めていきます。この段階では、すでに消えていたと金を再び取り戻す工夫がなされており、攻め方の駒が効果的に取り繋がれていきます。この様子は、詰将棋における考え方や手法の進化を感じさせます。

終盤

終盤では、攻めが一層熾烈になります。玉を竜で追い詰め、また駒を奪う動きが連なります。この過程で、持駒を巧みに使いながら、最終的には1筋の二歩が解消されるまでの緻密な攻防が展開されます。

作品の影響

この『寿』は、後世の詰将棋に多大なる影響を与えました。『将棋図巧』の他の作品と共に「神局」と称され、約200年間、他の作品に比肩する存在が現れませんでした。この記録は1955年に破られるまで、詰将棋界の金字塔でした。現在も611手以上の作品を『寿超え』と称することがあるように、詰将棋作家たちの目標の一つとなっています。

まとめ

『寿』は、ただの詰将棋作品ではなく、将棋界における革新の象徴と言えます。その影響は現代の詰将棋にまで及び、未だに多くの棋士や愛好者にとって憧れの的であり続けています。

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