寿岳文章

寿岳文章について

寿岳文章（じゅがく ぶんしょう、1900年3月28日 - 1992年1月16日）は、日本の英文学者、随筆家、翻訳家、そして和紙の研究者として知られる重要な人物です。彼は民藝運動にも積極的に参加し、和紙とその文化に対する深い理解を持っていました。また、彼の家族も教育や研究の分野で顕著な業績を残しています。たとえば、妻の寿岳しづは随筆家として名を馳せ、長女の寿岳章子は日本語学者として知られ、彼に多くの影響を受けました。

生い立ちと教育

寿岳文章は兵庫県明石郡押部谷村（現在の神戸市西区）にて生まれ、寺の住職である父のもとで育ちました。彼は姉の婚家の寺に養子として入り、僧侶としての名を得た後、寿岳文章に改名しました。1919年には東寺中学校を卒業し、その後関西学院高等学部の英文科に進学しました。在学中に失明した友人の岩橋武夫との交流を通じて、その妹と出会い、1923年には結婚に至ります。

1924年から1927年にかけては京都帝国大学の文学部で学び、修了後は新村出や柳宗悦らとの親交を深めることになります。彼はまた、一時的に河上肇の家庭教師としての経験も持っていました。

和紙研究と民藝運動

昭和初期、寿岳は柳宗悦の民藝運動に興味を持つようになり、その活動に参加しました。彼は全国の紙の生産地を訪れ、和紙の歴史と製法に関する詳しい研究を行い、多くの著作を発表しました。和紙に関する著書『和紙風土記』や学術誌『和紙研究』における論考は、和紙の専門家としての地位を確立することに貢献しました。

1933年には、京都府向日市に転居し、3年間にわたりウィリアム・ブレイクの詩を私家版で翻訳しました。また、和紙研究会の結成にも参加し、日本の和紙の発祥地について実証的な研究を重ねています。1943年には『紙漉村旅日記』を刊行し、和紙に対する熱意を表現しています。

学問の道と翻訳活動

寿岳は1951年に“A bibliographical study of W. Blake's note-book”を通じて文学博士の学位を取得し、その後甲南大学で教授として教育に携わります。彼は1960年代に正倉院の古紙調査の主導的な役割を果たしました。1967年には和紙に関する体系的な成果をまとめた『日本の紙』を出版し、現在でもこの分野の基本的なテキストとして引用されています。

その後、彼は文学の翻訳にも力を注ぎ、1977年にはダンテ『神曲』の完訳により読売文学賞を受賞しました。1988年には日本翻訳文化賞を受賞し、1990年に物集索引賞特別賞も受けています。彼の翻訳業績には、トルストイやブレイクの作品などが含まれています。

家族と影響

寿岳文章には2人の子どもがいて、長女の寿岳章子は日本語学者として著名です。彼女の著作はNHKのテレビドラマの原作にもなりました。長男の寿岳潤は天文学者としての道を歩み、家庭から文化と学問に対する高い意識を受け継いでいます。

晩年

1992年、寿岳文章は肺浮腫のために逝去しました。彼の墓は南禅寺慈氏院にあります。彼の生涯を通じて残した業績と、家族の影響は、日本の文化と教育において今でも重要な示唆を与え続けています。

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