将棋の渡辺くん

将棋の渡辺くん

『将棋の渡辺くん』は、伊奈めぐみによる日本の漫画作品で、『別冊少年マガジン』（講談社）にて2013年6月号から連載されています。本作は、作者である伊奈めぐみの夫であり、将棋棋士である渡辺明の日常を題材とした実録漫画です。2024年1月時点で、単行本の累計部数は50万部を超えています。

概要

この漫画は、渡辺・伊奈夫妻（当時）の会話や、将棋棋士の独特な生活を描いています。将棋をテーマにしていますが、実際の対局の棋譜が登場することはほとんどありません。原則として1話6ページ構成で、1つのエピソードが2、3ページにまとめられています。

特筆すべき点として、1巻の印税は東日本大震災、2巻の印税は熊本地震の義援金として日本赤十字社に寄付されています（2021年3月31日まで）。また、2015年と2019年には『週刊少年マガジン』に出張掲載されたこともあります。

制作背景

『将棋の渡辺くん』は、伊奈めぐみにとって漫画家としてのデビュー作です。連載前まで漫画を描いた経験がなかった伊奈が、個人ブログ『妻の小言。』を見た講談社の編集者から連載を打診され、ミリペンやスクリーントーンの使い方を習得して連載を開始したという経緯があります。

結婚前後に美術大学（通信制）の油絵科に通っていましたが、デッサンが苦手で卒業後は絵を描いていませんでした。そのため、編集者の予想に反して当初は漫画を描くことに苦労したそうです。連載前に編集者にネームを見せていたものの、30ページ中1ページしか使えるレベルに達していなかったといいます。

作品内容

作者の伊奈は、タイトルが『将棋の渡辺くん』に決まった時、当初は戸惑いを感じていたそうです。しかし、伊集院光のラジオで「構成の渡辺くん」という言葉を何度も聞くうちに、タイトルを受け入れられるようになったと述べています。

作中では、自宅のシーンにおいて渡辺一家の服装がほぼ固定されています。特に伊奈の服の背中には、そのエピソード当時の彼女の年齢が数字で書かれていることが特徴です。

単行本では各話の間に「渡辺くん大長考」と題して、読者からの質問に渡辺が答えるQ&Aコーナーが設けられています。このコーナーには、ライトノベル作家の白鳥士郎が自著『りゅうおうのおしごと!』の取材目的で寄せた質問が採用されたこともあります。

単行本の奥付には「★この漫画は実在の将棋棋士・渡辺明の日常を描いたノンフィクションです」と明記されています。ただし、作中では「95%は本当、残りの5%のフィクションはわかりやすくするため」とコメントされており、一部に脚色が加えられていることが示唆されています。

なお、渡辺と伊奈は2024年に離婚しましたが、離婚後も同居を続け、漫画の連載も継続する予定です。

登場人物

渡辺くん: 将棋棋士の渡辺明本人。作中では、棋士としての才能と日常生活でのギャップがユーモラスに描かれています。ぬいぐるみ愛好家であり、漫画好きである一面も持っています。
伊奈めぐみ: 渡辺明の元妻で、本作の作者。作中では、渡辺くんのボケに対するツッコミ役を担当しています。元女流育成会員であり、詰将棋作家でもあります。
* 柊 (しゅう): 渡辺夫妻の息子。作中にはあまり登場しません。

その他

Youtubeのマガジンチャンネルでボイスコミックが公開されています。また、小説現代2024年11月号では、伊奈めぐみが表紙を担当し、『将棋の渡辺くん』の特別読み切りや、渡辺明九段と岩谷翔吾の対談が掲載されました。

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