尋甸府

尋甸府の歴史

尋甸府（じんてんふ）は、中国にかつて存在した府であり、現在の雲南省尋甸回族イ族自治県一帯に位置していました。その歴史は、元代に遡り、明代、清代、そして中華民国へと変遷を遂げました。

元代

1256年（憲宗6年）、モンゴル帝国は溢浦（いつほ）に万戸を設置しました。これは、この地域における行政組織の最初の形と見なされます。

1276年（至元13年）、元朝は溢浦に仁徳府（じんとくふ）を設置しました。仁徳府は雲南等処行中書省に属し、為美（いび）県と帰厚（きこう）県の2県を管轄しました。これにより、地域は正式な行政単位としての地位を確立し、元朝の支配下に入りました。

明代

1383年（洪武16年）、明朝は仁徳府を尋甸軍民府（じんてんぐんみんふ）と改めました。この変更は、地域の行政体制における重要な転換点を示しています。

1476年（成化12年）、尋甸軍民府はさらに尋甸府（じんてんふ）と改められました。この時点で、府としての地位が確定しました。当時の知府は安氏が土司として世襲していましたが、1478年（成化14年）に改土帰流（かいどきりゅう）が行われ、流官（中央政府から派遣された官僚）による統治に移行しました。

改土帰流は、地方の土着の支配者による統治を廃止し、中央政府が直接官僚を派遣して統治する制度であり、この地域における中央集権化を進める上で重要な措置でした。

清代

1669年（康熙8年）、清朝は尋甸府を尋甸州（じんてんしゅう）に降格させ、曲靖府（きょくせいふ）の管轄下に置きました。この降格は、地域の行政上の重要性の変化を示しています。府から州への降格は、行政区画の規模が縮小され、地方官の権限が限定されることを意味します。

中華民国

1913年、中華民国によって尋甸州は廃止され、尋甸県（じんてんけん）と改められました。この変更は、中華民国における行政区画再編の一環であり、清朝時代からの制度が大きく変更されたことを示しています。

このように、尋甸府は元代から中華民国時代まで、その名称と行政地位を変えながらも、この地域を統治する重要な行政単位であり続けました。その歴史は、中国の行政制度の変遷と、地方統治のあり方を考える上で重要な事例を提供しています。

この地域は、現在の雲南省尋甸回族イ族自治県に相当し、その歴史的な背景は、今日においてもこの地域に深く根付いています。

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