小倉信近

小倉信近（おぐら のぶちか）

小倉信近は、1849年5月14日（嘉永2年4月22日）に出羽国（現在の山形県）米沢で、米沢藩士の家に生まれました。1926年（大正15年）10月1日にその生涯を閉じました。

海軍から警察官へ

1872年（明治5年）に海軍少尉に任官され、軍人としてのキャリアをスタートさせました。しかし、1876年（明治9年）には海軍を離れ、愛知県の三等警部に転身。ここから警察官としてのキャリアが始まりました。その後、石川県、徳島県、青森県と各地で警部部長を歴任。さらに検事、警視庁警視、警視総監官房第一部長などを務め、警察官僚としての地位を確立しました。

県知事、そして国会議員へ

1896年（明治29年）4月には福島県知事に就任。同年12月には同知事を退任しましたが、1897年（明治30年）6月14日には台湾嘉義県知事に就任し、1898年（明治31年）3月15日まで在任しました。

1898年（明治31年）8月には、第6回衆議院議員総選挙に山形県第二区から憲政党所属で出馬し、当選を果たし、政界へと進出しました。しかし、議員としての活動は短く、1900年（明治33年）11月12日に議員を辞職しました。

知事から司法官僚へ

1900年（明治33年）2月には三重県知事に就任し、同年10月には群馬県知事に転じました。しかし、1901年（明治34年）4月2日には知事を辞任し、司法省官房長という司法官僚の要職に就任。しかし、同年6月5日には病気を理由に司法省官房長を辞任しました。

教科書疑獄事件と失墜

その後、教科書疑獄事件に関与したとして官吏収賄罪に問われ、重禁錮2ヶ月の判決を受けました。この事件により、従四位の位を返上させられ、勲四等及び明治二十七八年従軍記章を剥奪されるという、大きな挫折を味わいました。

栄典

小倉信近は、その経歴の中で以下の栄典を受けています。

1895年（明治28年）10月31日 - 勲五等双光旭日章
1901年（明治34年）6月27日 - 勲四等瑞宝章

しかし、教科書疑獄事件により、1904年（明治37年）5月6日にこれらの栄典は剥奪されました。

参考文献

歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年。
衆議院・参議院『議会制度百年史 - 衆議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年。
内閣「警視小倉信近外一名官等陞叙ノ件」明治28年。国立公文書館 請求番号: 本館-2A-018-00・任Ｂ00058100
内閣「司法省官房長小倉信近依願免本官ノ件」明治34年。国立公文書館 請求番号: 本館-2A-018-00・任Ｂ00266100
* 宮地正人「教科書疑獄事件」、我妻栄編『日本政治裁判史録 明治・後』第一法規出版、1969年。

小倉信近は、明治期の激動の時代を駆け抜けた人物でした。そのキャリアは、多様な分野での活躍を示す一方で、晩年の汚職事件という悲劇も刻みました。彼の生涯は、当時の政治や社会の状況を映し出す鏡であり、後世に多くの教訓を残しています。

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