従軍記章

従軍記章について

従軍記章（じゅうぐんきしょう）は、戦前の大日本帝国が自国の戦役や事変に参戦した者たちへの顕彰のために制定された記章です。この記章は欧米の「Campaign medal」に相当し、軍人だけでなく文民や民間人にも広く授与され、特に戦闘で死亡した場合には遺族に贈られることもありました。

制定の背景

従軍記章の起源は1875年（明治8年）に遡ります。当時、「賞牌従軍牌制定ノ件」によって使われ始め、「従軍牌」として制定されました。この頃から、将軍と兵士の区別なく、軍功の有無に関わらず授与が行われることが定められました。翌年には名称が改められ、いよいよ「従軍記章」として確立されました。記章は、戦役や事変における貢献を証明するものであり、授与の際には賞勲局から証書も発行されました。

記章の構造と意義

記章は金属製の本体と、佩用のための綬（リボン）、鈕、飾版などから成り立っています。受章者はその記章を佩用し、有資格者であれば軍人だけでなく、民間人でも受章可能でした。この点が、金鵄勲章などの勲章と異なる点です。従軍によって命を落とした場合、その遺族も記章を受け取ることで、故人の貢献が証明されました。記章の授与は昭和20年（1945年）の敗戦まで続き、合計で8種類が制定されました。

従軍記章の種類

1. 明治七年従軍記章: 最初の記章で、台湾出兵に従軍した者へ授与され、唯一銀で製造されました。

2. 明治二十七八年従軍記章: 日清戦争に従軍した者に授与され、鹵獲した清軍の大砲から材料が作られました。

3. 明治三十三年従軍記章: 北清事変に従軍した者に与えられました。

4. 明治三十七八年従軍記章: 日露戦争の参加者向けに制定されました。

5. 大正三四年従軍記章: 第一次世界大戦時に青島の戦いとシベリア出兵に従事した者へ授与されました。

6. 昭和六年乃至九年事変従軍記章: 満州事変や上海事変に従軍した者への記章です。

7. 支那事変従軍記章: 発行数が最も多く、340万人が受章しました。

8. 大東亜戦争従軍記章: 最後に制定されましたが、戦局の悪化により授与されることなく廃止されました。

戦後の状況

1945年以降、従軍記章は実効性を失い、政府により廃止が進められました。特に支那事変 従軍記章と大東亜戦争従軍記章は1946年に廃止されました。ただし、従軍記章に関する規定は長らく残存しており、2003年にはようやく削除されました。自衛隊設立後も、従軍記章に似た防衛記念章が運用されていますが、正式な賞勲制度の下ではありません。

結論

従軍記章は、日本の近代史において戦争や事変に従事した人々を顕彰する重要な制度であり、国の歴史の一端を担っています。戦後も表彰制度の再検討が続いている中、戦時中の記章の意義や価値は今なお考えられています。

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