小出満二

小出 満二（こいで まんじ）は、日本の農政学者であり、多方面にわたり農業教育の発展に貢献した人物である。1879年8月13日、現在の兵庫県養父市にあたる養父郡伊佐村に生を受け、1955年5月29日に75歳でその生涯を閉じた。

学業では、旧制第一高等学校を卒業後、東京帝国大学農科大学で学び、1906年に卒業した。卒業後は同大学の助手に就任し、研究者としての第一歩を踏み出した。

若くして海外に目を向け、1910年には鹿児島高等農林学校（現在の鹿児島大学農学部）の要員として、農政や農業教育の先進事例を学ぶためドイツと英国へ留学した。約3年間の滞在を経て、1913年には米国を経由して日本へ帰国。これらの海外での経験は、その後の小出の教育者、研究者としての活動の基礎を築くこととなった。

帰国後、1914年に鹿児島高等農林学校の教授に就任。海外で得た知見を教育に生かした。さらに、1918年から1920年にかけては、オーストラリアのシドニー大学にて交換教授を務めるなど、国際的な視野を持った活動を展開した。

日本に戻ってからは、1921年に文部省の督学官として、教育行政の分野にも携わる。その後、1928年には九州帝国大学農学部教授に転じ、高等教育機関での研究・教育活動を続けた。教育現場でのリーダーシップを発揮し、1936年には九州帝国大学教授と兼任する形で、かつて教鞭を執った鹿児島高等農林学校の校長に就任。さらに1938年には、東京高等農林学校（現在の東京農工大学）の校長を務めるなど、要職を歴任した。これらの学校で、多くの学生や研究者の育成に尽力した。

小出は、思想面では内村鑑三や新渡戸稲造といった、当時の日本の精神的支柱であった人物たちの薫陶を受けている。彼らの思想は、小出の農政観や教育理念に深い影響を与えたと考えられる。特に、新渡戸稲造の「武士道」や国際的な視点、内村鑑三の敬虔な信仰と社会への関心は、小出の活動の根底にあったと推測される。

1945年、東京高等農林学校を定年により退官し、同校の名誉教授となった。同年には正三位に叙されている。終戦後も、その教育への情熱は衰えることなく、財団法人農民教育協会が設立した鯉淵学園（現在の鯉淵学園農業栄養専門学校）の初代学園長に就任し、農民教育の振興に力を注いだ。

その功績に対し、没後には勲二等旭日重光章が追贈された。

著作も数多く残しており、『デンマルク農民教育』、『郷土芸術』、『農業教育』、『農村教育』など、農村問題、農業教育、デンマークの教育事例に関するものが目立つ。また、『新編女子公民教科書』や共著の『最新実業補習教育要義』など、実業教育や公民教育にも関心を持っていたことがうかがえる。戦後には、敗戦からの復興を目指す日本に向けた『デンマルクの話 敗戦のドン底から起ち上り文化と生活を高めた平和国』といった著作も発表している。これらの著作は、当時の日本の農政や社会教育のあり方を考える上で貴重な資料となっている。

私生活では、六女に歴史学者の吉村証子がいる。墓所は東京都府中市にある多磨霊園に営まれている。

小出満二は、激動の時代において、農政学者、教育者として、国内外で活躍し、日本の農業教育、特に農民教育の発展に大きな足跡を残した人物であると言える。

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