小川屋

株式会社小川屋

新潟県新潟市中央区の古町通に本店を置く株式会社小川屋は、1893年（明治26年）に創業した歴史ある食品メーカーです。創業以来、漬け魚を中心に新潟の豊かな食材を活かした商品の製造を手掛けており、地元の皆様はもちろん、新潟を訪れる人々にとっても、土産品や中元・歳暮といった贈答品の定番として深く根付いています。

沿革と変遷

小川屋の歴史は、初代である小川駒吉氏が1893年に事業を始めたことに遡ります。当初は甘露梅の製造からスタートしましたが、やがて鮭や鱒といった魚介類を独自の製法で漬け込んだ商品へと重心を移していきました。新潟の食文化に根ざしたこれらの漬け魚は、地元の食材を最大限に活かし、高品質な製品づくりを目指す小川屋の原点となりました。特に、酒かすや味噌にこだわった高級品の開発に力を入れたことで、新潟を代表する土産品としての地位を不動のものとしていきます。

1908年には現在の本店がある古町通へと拠点を移し、地域に根差した営業を展開しました。その品質の高さは広く認められ、1964年に新潟で開催された国民体育大会では、小川屋の商品が天皇献上品として選ばれる栄誉に浴しました。これを機に、小川屋の商品は新潟における中元や歳暮の贈答品として、さらに多くの家庭で愛されるようになります。事業は順調に拡大し、1990年代には年間売上高が13億円に達するなど、最盛期を迎えました。

しかし、その後のバブル経済崩壊は、主に高級贈答品市場に大きな影響を与えました。ギフト需要の低迷は小川屋の経営にも暗い影を落とし、売上は下降線をたどります。2016年度には年間売上高がピーク時の約4分の1となる3億円にまで落ち込み、会社の存続が危ぶまれる状況となりました。

この危機を乗り越えるため、2016年12月、小川屋は新たな道を歩むことを決断します。地域経済の活性化を目指すNSGグループの一員である株式会社和僑商店が、小川屋の事業を承継し、株式会社化しました。和僑商店は、1769年創業の今代司酒造や1931年創業の越後味噌醸造といった新潟の老舗企業の事業再生・承継において確かな実績を持っていたため、小川屋の再建への期待が寄せられました。この事業承継に伴い、葉葺正幸氏が新体制の代表取締役社長に就任しました。

新たな展開と商品

和僑商店による事業承継後、小川屋は伝統を守りつつも、時代の変化に対応した新たな取り組みを進めています。その一つが、2017年に発売された主力商品「匠漬（TAKUMI ZUKE）」です。この商品は、熟成味噌、あま酒、塩麹といった、新潟の醸造文化に根ざした発酵調味料を使い、トラウトサーモン、紅鮭、銀鱈といった魚を丁寧に漬け込んだものです。それぞれの魚と漬け床の組み合わせにより、計9種類の豊かな味わいが楽しめます。

現在、小川屋の商品は、新潟市内の古町本店、新潟伊勢丹店、イオン新潟東店、清水フードセンター大学前店といった直営店舗で購入できるほか、遠方のお客様でも手軽に利用できるようオンラインストアでの販売にも力を入れています。

主な商品ラインナップとしては、「匠漬」の他に、白焼きにした魚介を醤油だれに漬け込む新潟の伝統的な郷土料理である「匠の焼漬」、新潟に古くから伝わる鮭、鱈子、筋子を銘酒八海山の吟醸粕で漬け込んだ「三色漬」、独自の製法で熟成させたトラウトサーモンの「熟成紅ます」、そして手作りのさけ茶漬けなどを詰め合わせた「びん詰合せ」などがあります。これらに加え、越乃甘粕漬、復刻味噌漬、焼き上げ越乃甘粕漬、越乃甘粕塩辛、あまざけ、いちじく甘露煮、惣菜といった多岐にわたる商品を取り揃え、新潟の食の魅力を発信し続けています。

伝統の味を守りつつ、革新的な商品開発にも挑む小川屋は、新潟の食文化を未来へと繋ぐ大切な役割を担っています。

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