小林はくどう

小林はくどう（1944年生まれ）は、日本の映像作家、造形作家であり、市民ビデオ運動の先駆者として知られています。本名は小林博道。成安造形大学名誉教授。

宮城県仙台市で生まれた小林は、多摩美術大学で油絵を専攻した後、造形作家としてのキャリアをスタートさせました。1960年代後半には、機械仕掛けで動く彫刻「はくどうマシン」を発表し、日本現代美術展や大阪万博で注目を集めました。特に大阪万博では、お祭り広場の演出を手がけたことがきっかけで、映像表現に強い関心を抱くようになります。

1972年からはビデオ制作に本格的に取り組み始め、山口勝弘、中谷芙二子、かわなかのぶひろ、松本俊夫、萩原朔美らと共に「ビデオひろば」を結成。「鷲づかみの映像」など、実験的なビデオプロジェクトを数多く手がけました。1973年には、「ビデオひろば」による横浜野毛再開発リサーチをきっかけに、ビデオを社会と結びつける活動に興味を持つようになり、1978年には日本初のビデオコミュニティを東京都国立市で制度化しました。「ビデオひろば」の活動は、2016年に森美術館で展示され、その先駆的な業績が再評価されています。

教育者としては、1980年に筑波大学芸術学系専任講師として北北海道調査研究に参加。その後、成安女子短期大学、成安造形大学で教鞭をとり、後進の育成に尽力しました。また、ニューヨーク近代美術館やポールゲッティ芸術センターをはじめ、国内外の数多くの美術館や芸術祭でビデオアート作品を発表し、国際的な評価を得ています。中国や韓国との作家交流展、JAALA(日本・アジア・ラテンアメリカ／・アフリカ)美術家会議にも積極的に参加し、国際的な文化交流にも貢献しました。

小林はくどうの活動で特筆すべきは、市民ビデオへの貢献です。1978年から2009年まで、東京ビデオフェスティバル（日本ビクター主催）の企画、運営、審査委員を担当し、その後、運営を引き継いだNPO法人「市民がつくるＴＶＦ（東京ビデオフェスティバル）」では代表理事を務めました。NHKテレビ番組『あなたも映像作家』の講師や、とよたビデオコンテスト、全国ビデオ映像コンテストなどの審査委員長を歴任。さらに、多数の自治体で映像講座の講師を務めるなど、市民が映像制作に触れる機会を積極的に提供しました。2016年からは市民ビデオ研究会を主催し、2018年には市民ビデオの専門誌『ビデオゲルニカ』を発行するなど、市民ビデオの発展に多大な貢献をしています。

主な発表歴としては、1967年の関根伸夫との二人展を皮切りに、1968年の「日本かまいたち展」プロデュース、1969年の日本現代美術館コンクール賞受賞、1970年の大阪万博での作品展示などがあります。また、海外では、1979年のニューヨーク近代美術館での展示や、1982年のシドニービエンナーレ、1988年のビデオナーレ（ドイツ・ボン）など、数多くの国際展に参加しています。近年の活動としては、2010年の登米アートトリエンナーレ、2015年の上海・梧桐美術館での「芸術の絆TSA中日交流展」、2018年のスウェーデン・ストックホルムでの2018VIDEOGUDへの出品などがあります。2023年にはギャラリイKにて「ケーススタディはアートだ」展を開催しました。

作品は、アーヘン市ラドウィッグ美術館、ニューヨーク近代美術館、宮城県美術館、広島現代美術館、愛知県立芸術センター、ポール・ゲッティ芸術センター、横浜美術館、徳島県美術館などに収蔵されています。

受賞歴も多数あり、1968年のウオカー画廊コンペ第一席、1969年の日本現代美術展コンクール賞、1986年、1998年の東京ビデオフェスティバル功労者顕彰、1991年のSAVA企業映像祭「SAVA会長賞」、2010年の情報文化学会片方善治賞などがあります。

著書には、『ビデオ便利帳』、『ザ・スーパービデオ』、『PLAY THE VIDEO』、『はくどうのビデオジャングル』、『市民ビデオ宣言』などがあり、市民ビデオの普及に大きく貢献しています。

小林はくどうは、映像と造形の領域を横断し、常に新しい表現を追求し続けてきました。その活動は、日本の現代美術と映像文化に大きな足跡を残し、今日に至るまで多くの人々に影響を与え続けています。

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