小林盆地

小林盆地：霧島山と九州山地に抱かれた恵みの地

宮崎県小林市とその周辺に広がる小林盆地は、周囲を雄大な自然に囲まれた、独特の地理的特徴を持つ盆地です。その直径は約10キロメートルにも及び、小林市の市街地を包含するだけでなく、高原町にもその領域を及ぼしています。

盆地の地形と気候

北東から東にかけては九州山地、南西にかけては霧島連山の山々が盆地を囲み込むようにそびえ立っています。盆地の標高は150メートルから300メートルの範囲にあり、周囲の山々から隔絶された地形のため、昼夜の気温差や季節による気温変化が著しく、しばしば霧が発生することでも知られています。特に冬季には、霧島山系から吹き下ろす冷たい西風「霧島おろし」が盆地を吹き抜けます。

水系と湧水

大淀川水系の支流である岩瀬川が、盆地を潤す主要な水系です。岩瀬川は、石氷川、辻ノ堂川、浜ノ瀬川といった支流を合わせながら、盆地の東部から流れ出ます。小林盆地は、豊富な湧水にも恵まれています。名水百選にも選ばれた「出の山湧水」をはじめ、盆地内には40ヶ所以上もの湧水地が存在し、古くから人々の生活を支えてきました。これらの湧水は、農業や生活用水として利用され、盆地の豊かな自然環境を象徴する存在となっています。

産業

小林盆地は、かつては米、麦、サツマイモといった農作物が主要な産物でした。しかし、昭和40年代以降は畜産業が盛んになり、酪農を中心に発展を遂げています。湧水に恵まれた土地柄を活かした農業と、近年の畜産業の発展は、小林盆地の経済を支える重要な柱となっています。

地質と成り立ち

小林盆地の形成は、約52万年前の火山活動に深く関わっています。この時代、小林サクラ火山灰を噴出させた大規模な噴火が発生し、その結果として小林カルデラが形成されたと考えられています。しかし、現在の地形からはカルデラの輪郭は明瞭ではありません。

盆地の地質は、場所によって異なります。北東部は九州山地を構成する四万十層群と呼ばれる地層が基盤となっており、南西部には霧島山の溶岩流が流れ込んでいます。盆地内部には、西隣に位置する加久藤カルデラ起源の溶結凝灰岩や、入戸火砕流、鬼界アカホヤ火山灰などの火山噴出物が厚く堆積しています。盆地の中央部には、沖積層が広がっています。これらの多様な地層が、小林盆地の複雑な地質構造を物語っています。

関連する盆地

小林盆地は、地理的に近接する加久藤[[盆地]]や都城盆地と合わせて、宮崎県東部における盆地群を形成しています。これらの盆地は、それぞれ独自の地形や地質、歴史的背景を持ちながらも、相互に関連し合い、地域全体の自然環境や社会経済に影響を与えています。

参考文献

小林市史編さん委員会編　『小林市史　第3巻　戦後編』　小林市、2000年
町田洋他編　『日本の地形　7　九州・南西諸島』　東京大学出版会、2001年、ISBN 4-13-064717-2

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