四万十層群

四万十層群とは

四万十層群（しまんとそうぐん）は、房総半島から沖縄本島まで、約1,800kmにわたり帯状に分布する広大な地層群です。地質学的には四万十帯として知られ、西南日本外帯に属しています。この層群は、主に砂岩、泥岩、チャート、玄武岩などで構成され、海底地すべりの痕跡や変成作用を受けた地層も含まれています。四万十層群の北側は秩父帯や三宝山層群と接し、仏像構造線によって区切られていますが、南側の境界は明確ではありません。大きく、四万十層群北帯と南帯に分けられます。

形成過程

四万十層群は、中生代白亜紀から新生代古第三紀にかけて形成された付加体です。海洋プレートが海溝に沈み込む際、その上に堆積した砂や泥が、衝上断層によって多数の地塊に分割され、傾斜しながら地上に押し上げられました。その結果、地塊内部では北側ほど新しい地層が分布しますが、層群全体としては南側ほど新しい地層が形成されています。

研究史

1926年、地質学者の江原真伍によって、四万十川流域の地層群が「四万十統」と命名されました。その後、日本列島南部に分布する付加体からなる地層群の総称として用いられるようになりました。四万十層群は、単調な地層構造、鍵層の少なさ、断層や褶曲による変形、大型化石の欠如などから、年代特定が困難でした。しかし、1960年代以降、微化石研究や古地磁気学の進歩により、本格的な研究が進みました。1980年代には、紀伊半島東部の地層が四万十層群の一部であることが判明し、日本の地質図が大きく修正されることになりました。

分布

四万十層群は、日本列島の広範囲に分布しています。以下に主な地域ごとの分布状況を説明します。

関東地方

房総半島の嶺岡山地にわずかに露出する程度ですが、地下では基盤地層として存在すると考えられています。関東山地の中部から南部にかけては広く露出しており、小河内層群、大滝層群、川上層群などに分けられます。

中部地方

糸魚川静岡構造線より西側の赤石山脈に広く分布し、瀬戸川層群、三倉層群、犬居層群などに区分されます。南から北へ進むにつれて層群の幅が狭くなる傾向があります。

近畿地方

紀伊半島の中部から南部にかけて広く分布し、日高川層群、音無川層群、牟婁層群に分けられます。紀伊半島東部では、秩父帯が欠落しており、四万十層群が中央構造線を挟んで領家帯と隣接しています。

四国地方

四国山地南部に広く分布しており、東部では安芸構造線を境に北帯と南帯に区分されます。西部では、新荘川層群、大正層群、幡多層群などに分類されます。

九州地方

九州山地南部に広く分布し、佐伯層群、蒲江層群、北川層群などに分けられます。出水山地、揖宿山地、高隈山地などにも分布しますが、火山噴出物に覆われている場所が多く、露出は限られます。

南西諸島

種子島と屋久島の熊毛層群、奄美大島東部の名瀬層、沖縄島の国頭層群などが、四万十層群に相当すると考えられています。

まとめ

四万十層群は、日本列島の地質構造を理解する上で重要な地層群であり、その複雑な形成過程は、プレートテクトニクス理論を裏付ける証拠の一つとなっています。今後の研究によって、その全容がさらに解明されることが期待されます。

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