小栗吉忠

小栗吉忠（おぐり よしただ）

小栗吉忠は、大永7年（1527年）に生まれ、天正18年9月16日（1590年10月14日）に没した、安土桃山時代の武将であり代官です。通称は又市、仁右衛門。父は小栗忠吉で、母については小栗正重の妹とする説と、その娘とする説があり、系譜に混乱が見られます。子に小栗忠政らがいます。

生涯

三河小栗氏の居城である三河国筒針城（現在の愛知県岡崎市筒針町）で育ちました。松平広忠に小姓として仕え、その偏諱を受けて吉忠と名乗りました。広忠の死後は、松平元康（後の徳川家康）に仕え、当初は槍働きで活躍しました。

桶狭間の戦いや三河一向一揆、今川氏真との掛川城攻防戦などでは、「小栗党」と称される一族郎党を率いて武功を挙げ、遠江国中泉に八百二十四貫文の地と、同心41名を与えられました。これが「小栗同心」の始まりです。

吉忠はその後、奉行として内政面で活躍しました。三遠奉行と称されたと伝えられますが、当時はそのような役職があったわけではありません。主に遠江国を中心に、検地や寺社領支配、街道整備などに携わりました。天正10年（1582年）の甲州征伐後には、東海道を遊覧する織田信長のために、浅井道忠らと共に天竜川に架橋し、付近の宿場などを整備しました。これらの功績により、信長から褒美を受けています。

同年5月、安土城で織田信長に拝謁した家康に同行し、その後、和泉国堺で遊覧中に本能寺の変が起こりました。堺に隠棲していた伊奈忠次と共に家康の伊賀越えに貢献し、忠次の帰参を認めさせて同心配下としました。この忠次が後に小栗同心の中心人物となり、江戸幕府の内政面での基礎を築く代官頭・関東郡代へとつながっていきます。

天正15年（1586年）から数年にわたって行われた五か国総検地では、吉忠とその配下の小栗同心が中心となって検地を行いました。

天正18年（1590年）の小田原征伐では、駿河国吉原（現在の静岡県富士市）に架橋し、豊臣秀吉の饗応を任されました。さらに、出陣した家康に代わって病をおして駿府城の留守役を務めましたが、城内で倒れ、そのまま死去しました。享年64。法名は宗善。

墓所は三河国宮崎の三論宗秦寶寺にありましたが、慶長2年（1592年）に家康の命により江戸に移され、現在の東京都千代田区にある心法寺にあります。

小栗吉忠は、戦国時代から安土桃山時代にかけて、武将としてだけでなく、内政面でも優れた能力を発揮し、徳川家康の天下統一を支えた人物として評価されています。特に、江戸幕府の基礎を築いた伊奈忠次を登用したことは、大きな功績と言えるでしょう。

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