小田原電気鉄道チキ2形電車

小田原電気鉄道チキ2形電車

小田原電気鉄道チキ2形電車は、小田急箱根の前身である小田原電気鉄道が導入した電車です。本記事では、チキ2形を中心に、関連するチキ3形についても解説します。

登場の経緯

小田原電気鉄道は1919年に鉄道線を開業しましたが、第一次世界大戦の影響で当初予定していたスイス製の車両部品の導入が遅れました。そのため、開業時にはアメリカ製の部品を使用したチキ1形を導入しました。その後、1921年に開業した鋼索線では、スイスからすべての装置を輸入。このような背景から、1927年の車両増備にあたっては、スイス製の部品を使用した車両を導入することになり、チキ2形が登場しました。

車両概説

チキ2形・チキ3形は、全長14.6mの制御電動車として製造されました。「チキ」という形式名は、「チ」が地方鉄道線用、「キ」が客車を意味します。

車体

チキ2形の初期車体は、日本車輌製造製の木造車体でした。両側に運転台があり、運転室は出入口とは分離されていました。客用扉は運転室直後と車体中央の3箇所に設けられ、中央扉にはステップが設置されていました。車内は、ロングシートの並等客室とクロスシートの特等客室に分かれていました。集電装置はトロリーポールでした。

一方、チキ2形の増備車とチキ3形の車体は、川崎車両製の鋼製車体（半鋼製車体）でした。車体外板はリベットで接合され、客用扉は2箇所に設置。車内はすべてロングシートとなりました。集電装置は菱形パンタグラフに変更されました。

主要機器

チキ2形

チキ2形の電装品はスイス製で、主電動機にはブラウン・ボベリ (BBC) 製の直流直巻電動機を採用。1両あたり4基搭載し、吊り掛け駆動方式を採用しました。制動装置は、空気ブレーキ、手ブレーキに加え、発電ブレーキ、レール圧着ブレーキを装備していました。台車は、スイス車両エレベーター製造製の板台枠台車を使用しました。

チキ3形

チキ3形の電装品は、ほとんどが日本製でした。主電動機は芝浦製作所製の直流直巻電動機を採用し、一部にチキ1形からの流用もありました。駆動方式は吊り掛け駆動方式。制動装置はチキ2形と同様です。台車は、チキ2形を参考にした川崎車輛製の板台枠台車を使用しました。

沿革

1927年8月にチキ2形3両が製造され、同時に2両分の電装品と台車が輸入されました。1935年9月にはチキ2形2両とチキ3形3両が増備され、チキ2形の全車両が間接制御に交換され、連結器も密着連結器に変更されました。同時期に車体色が緑色1色に変更されています。

1950年、小田急電鉄の乗り入れに伴い、鉄道線の架線電圧が600Vから1,500Vに昇圧されることになり、チキ2形・チキテ2形は複電圧仕様に改造されました。1952年には形式称号が「モハ」に変更。木造車体の車両は、1955年から1957年にかけて鋼製車体に更新されました。車体色も変更され、1957年には小田急ロマンスカーと同様の塗装デザインとなりました。

1985年からはモハ2形に対して、台車の交換と同時に駆動方式の変更が行われました。1990年にはモハ110号が特別塗装に変更され、1993年には3両編成運転開始を記念した塗装が施されました。

廃車

1984年に1000形「ベルニナ号」が増備されたことに伴い、モハ113号・モハ115号が1985年に廃車。1991年にはモハ111号とモハ112号が、1997年にはモハ114号が廃車となり、モハ3形は全廃となりました。2017年2月にはモハ2形110号が、2021年3月にはモハ2形109号が営業運転を終了しました。

現在

現在、チキ2形の一部車両は保存されており、その歴史を今に伝えています。箱根登山鉄道の歴史を語る上で欠かせない存在です。

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