小田急デト1形電車

小田急デト1形電車

小田急デト1形電車は、1953年から2003年まで小田急電鉄が所有していた特殊な電車です。この車両は主に工場内での入換作業に使用されており、廃車された車両の部品をリサイクルして造られました。初めは経堂工場で運用されていましたが、その後大野工場に移行し、2003年までその役割を果たしました。

背景

経堂工場内では、これまで予備の電車を用いて入換作業を行っていました。しかし、利用者の増加により、予備車両を常備することが困難になりました。そこで、新たな入換用車両としてデト1形電車が開発されることとなったのです。元々はモニ1形という車両が経堂工場内に放置されており、これを再利用して製造が行われました。製造費用は約90万円という低コストで、経堂工場の従業員たちの創意工夫も評価されていました。

車両の特徴

デト1形電車の最大の特徴は、台枠に廃車の部品をそのまま使いやすい形で配置したことです。外観はオレンジ色に塗装され、運転台は新宿側に設置されています。また、車両のバランスを取るために、小田原側の平床部分にはウエイトが追加されています。これにより、安定した運転が可能でした。

主な機器

これらの電車には、三菱電機製のMB-146A直流直巻電動機が二基吊り掛け式で装備されており、定格出力は93.3kWです。また、台車に関しては、当初はKS30Laとされていたものが、1956年にはKS31Fとされていました。制御器には電磁空気単位スイッチ式が用いられ、ブレーキは直通空気ブレーキと手ブレーキが搭載されています。

また、運転台に遠隔操作が加わることで、連結作業をより簡便に行えるようになりました。小田急電鉄はこの技術を活かし、効率的な運用を実現しました。集電装置は三菱電機製のパンタグラフを使用しており、工場や駅構内の限定的な走行が考慮されています。

歴史の流れ

デト1形電車は、1954年5月に制式な登録がされたものの、実際には1953年から使用されていました。1962年に大野工場が新たに開設されると、こちらに移動されました。この時、車体下部には運転台から見やすい固定窓が追加され、効率的な運転が可能となりました。1980年代にはさらなるアップグレードが行われ、台車や主要機器も入れ替えられました。

1994年の補修や2002年の新入換動車の導入を経て、デト1形電車は2003年に廃車されました。この時期、小田急電鉄からの釣り掛け駆動車両は消滅し、「MB-146系」の電動機も姿を消しました。廃車後この車両は解体され、現在は現存していません。このように、小田急デト1形電車は、特異な設計と歴史を持った車両として、鉄道史に名を残しています。

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