小督

小督の生涯とその影響

小督（こごう）は、保元2年（1157年）に生まれた平安時代末期の女性であり、その本名は不明ですが、成子とも呼ばれています。彼女は高貴な家系に生まれ、藤原通憲の孫にあたる桜町中納言・藤原成範の娘です。また、高倉天皇の後宮に仕えていたことでも知られています。小督はその類まれな美しさと琴の腕前から人々の注目を集め、始めは冷泉隆房の愛人でしたが、後に高倉天皇に見初められ、寵姫として特別な地位を得ました。

高倉天皇に対する小督の影響は非常に大きく、彼女は天皇にとっての唯一無二の存在となっていきました。然而、こうした幸福な状況は長くは続きませんでした。中宮である平徳子の父であり、清盛の舅でもある平清盛は、天皇が中宮の側を差し置いて小督に心を奪われることに強い不満を持ちました。清盛の怒りを買った小督は、治承元年の11月、第二皇女の範子内親王を出産後、清閑寺で出家させられました。

出家後の小督の生涯については多くの詳細が不明ですが、藤原定家が元久2年（1205年）に彼女の病床を訪れた記録が残っています。彼女以降の消息は記録に残っていないため、隠された人生を知る術はありません。小督は『平家物語』や『たまきはる』にも登場し、さらに能の『小督』という作品でも取り上げられ、その名は後世まで語り継がれています。

小督哀話

小督の物語は、平安時代末期の情景が描かれています。高倉天皇は彼女を失った後、深い悲しみに沈んでいました。その様子を見た中宮の徳子は、彼を慰めようと、音楽と美貌で名高い小督を紹介します。小督は宮中でその名を知られ、天皇の寵愛を一身に受ける存在となりましたが、平清盛の恨みによって再び苦境に立たされることになりました。

彼女は高倉天皇との逢瀬を秘密にしながら、清盛の目を避けるために身を隠していました。しかし、天皇もまた小督への情を失わず、源仲国を通じて彼女をこっそりと呼び戻す算段をします。仲秋の夜、仲国は小督が居る場所に向かい、彼女が返事を返すことを期待して笛を吹きました。その音色に応じて、小督が響き返した「想夫恋」の声を聞いた仲国は小督を宮中に帰す決意をします。

小督は初めは恐れを抱き、清盛の追及を恐れて帰ることをためらいましたが、仲国の説得によって宮中に戻ることになります。しかし、二人は密かに逢瀬を続ける中で、清盛におもねる者からその秘密が漏れ、事態は急展開を迎えます。最終的に、小督は無理やり出家させられ、その後の消息は失われてしまいました。

この悲劇的な物語は能の作品『小督』としても語られ、特に嵯峨野での出来事が鮮烈に描写されています。演目としても現在現在でも愛されるこの作品は、非常に美しく、かつ哀れを誘う内容となっており、多くの人々の心を打つものです。小督の物語は、平安時代の愛と悲劇が交錯する一つの象徴とも言えるでしょう。

もう一度検索