小野竹喬

小野竹喬（おの ちっきょう）

小野竹喬は、1889年11月20日に岡山県笠岡市で生まれ、本名は小野英吉です。彼の画業は75年以上にわたり、近現代の日本画界を代表する存在として、高い評価を受け続けました。特に、日本の自然が持つ美しさを見事に表現した作品が多く残されています。

経歴と影響

竹喬は幼少期から画家一家に育ち、彼の祖父や長兄も画家でした。1903年に京都に移り住むと、竹内栖鳳に師事し、その後、初期の作品に栖鳳の影響を色濃く受けました。1909年には京都市立絵画専門学校の第一期生として入学し、1911年に卒業。彼の作品には、写生とアプローチした作品が多く見られるようになります。

1921年には、竹喬は同じく絵専の卒業生たちと共に国画創作協会を設立しました。この団体は、伝統的な国展の形式に対抗し、自由な表現を追求するために設立されました。竹喬自身の作風も、この時期に西洋の影響を取り入れる一方で、日本の伝統美を重んじた作品へと進化していきました。

戦中の変化と影響

1939年から1941年にかけて、竹喬は自身の表現スタイルを変革し始めます。従来の線描と淡彩による風景画から、もっと日本的な大和絵的表現を求めるようになります。また、太平洋戦争の影響を受け、戦争をテーマにした作品や自然の象徴を描くことも増えました。この時期、竹喬は多くの身内や友人を失い、彼の心情に影響を与えたと言われています。

戦後の活躍

戦後、竹喬は1947年に京都市美術専門学校の教授となり、教育と創作の両方に尽力しました。彼の作品は、明るく柔らかい色彩を多用し、自然の美しさを象徴的に描くようになります。特に、夕焼けの空を背景にした樹木の作品は、竹喬の代表的なモチーフとなり、1974年に発表された《樹間の茜》などがその例です。

また、晩年には松尾芭蕉の『おくのほそ道』を題材にした連作《奥の細道句抄絵》を完成させ、彼の独自の視点と感受性を感じさせる作品群を生み出しました。彼は1976年に文化勲章を授与され、日本画壇における重鎮的存在としてその名を広めました。

代表作と影響

竹喬の作品群には、代表作として「郷土風景」（1917年）や「波切村」（1918年）、「冬日帖」（1928年）、さらには晩年の「奥の細道句抄絵」（1976年）などがあります。これらの作品は、京都国立近代美術館や笠岡市立竹喬美術館などに所蔵されています。彼の描く自然の風景や情景は、多くの人々に影響を与え、今日でも広く評価されています。

1979年5月10日、竹喬は胃癌により89歳で他界しました。彼が過ごした等持院の周辺は、彼の描いた風景の源にもなり、今も静かな雰囲気を保っています。竹喬の作品と彼が残した足跡は、今もなお多くの人々に感動を与えるものとなっています。

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