小馬徹

小馬 徹（こんま とおる）

小馬 徹（1948年 - ）は、日本を代表する人類学者の一人です。彼は文化人類学、社会人類学を主たる専門分野とし、特にアフリカ研究および日本研究において顕著な業績を残しています。長年にわたり教育・研究活動に携わり、神奈川大学人間科学部教授を務めました。その研究活動は高く評価され、数々の権威ある賞を受賞しています。

経歴と学術活動

富山県高岡市に生まれた小馬徹氏は、学術の道を志し、1974年に横浜市立大学文理学部を卒業しました。その後、一橋大学大学院社会学研究科に進学し、1981年には博士課程の単位を取得しています。大学院では長島信弘氏の指導を受けました。研究者としてのキャリアは、大分大学助教授として始まり、次いで神奈川大学外国学部教授を経て、最終的に神奈川大学人間科学部人間科学科教授として多くの学生を指導しました。

学会活動においても積極的に貢献しており、1996年から1998年まで日本ナイル・エチオピア学会評議員、1998年から2000年まで日本民族学会（現・日本文化人類学会）庶務理事、そして2008年から2010年まで日本文化人類学会評議員を務めるなど、関連学会の運営にも深く関わりました。

研究とその評価

小馬氏の研究対象は多岐にわたりますが、一貫して人類学的手法を用いて文化や社会の仕組みを深く探求しています。文化人類学や社会人類学の視点から、アフリカや日本の社会構造、文化現象を分析しました。

その学術的な成果は、以下の受賞歴に明確に示されています。

第8回毎日21世紀賞: 1989年に論文「人間とカネ」により受賞しました。この論文は、経済活動における人間関係や文化的な意味合いを人類学的に考察したものです。
第51回毎日出版文化賞: 1997年に『田主丸町誌』の執筆に携わったことで受賞しました。これは、特定の地域社会の歴史や文化を詳細に記録し、分析した業績が高く評価されたものです。
第56回西日本文化賞: 同じく1997年に『田主丸町誌』により受賞しました。地方文化研究への貢献が認められたものです。

また、2001年には論文「キプシギスの近代化と政治構造」によって、東京都立大学より博士（社会人類学）の学位を取得しています。この論文は、アフリカの特定社会における近代化の過程とその政治構造への影響を詳細に分析したものです。

主要な著作

小馬氏の幅広い研究は多くの著作として結実しています。単著、共著、編著、訳書などがあり、それぞれの分野に貢献しています。

著書

『聖と俗のドラマ』（共著）勁草書房 1993年
『家族のオートノミー』（丸山茂, 橘川俊忠と共編）早稲田大学出版部 1998年（新装版 2007年）
『贈り物と交換の文化人類学』御茶の水書房 2000年
『カネと人生』（編）雄山閣 2002年
『フィールドワーク事始め』御茶の水書房 2016年
『文化を折り返す』青娥書房 2016年
『「統治者なき社会」と統治』神奈川大学出版会 2017年
『「女性婚」を生きる』神奈川大学出版会 2018年

訳書

ジェイコブ・J.アコル著『ライオンの咆哮のとどろく夜の炉辺で』青娥書房 2010年

これらの著作は、人類学の専門家だけでなく、一般読者にも文化や社会を理解するための新たな視点を提供しています。特に『贈り物と交換の文化人類学』や『フィールドワーク事始め』などは、それぞれのテーマにおける基礎的かつ重要な文献となっています。

小馬徹氏の研究活動は、人類学の発展に貢献し、多様な文化や社会構造に対する理解を深める上で重要な足跡を残しています。

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