少子部蜾蠃

少子部蜾蠃（ちいさこべのすがる）について

少子部蜾蠃は、『日本書紀』や『日本霊異記』に登場する、古代の豪族です。雄略天皇の時代に仕え、その特異な行動と並外れた力で、数々の伝説を残しました。名前の「蜾蠃」は、腰の細い似我蜂を指し、当時の人々が彼をどのように見ていたかを想像させます。

名称について

「少子部」は、天皇の側近に仕える童子や女孺の養育費を管理する品部であったと考えられています。また、小子部連氏は、神武天皇の子孫とされ、後に「宿禰」の姓を賜っています。これらの記述から、少子部蜾蠃が単なる豪族ではなく、朝廷において重要な役割を担っていたことが伺えます。

伝説的な逸話

誤って嬰児を集めた事件

『日本書紀』によると、雄略天皇が后妃のために養蚕を奨励した際、スガルは蚕を集めるよう命じられました。しかし、彼は誤って嬰児を集めてしまい、天皇を大いに笑わせました。天皇はスガルにその嬰児の養育を命じ、これを機に少子部連の姓を与えたとされています。

三輪山の蛇を捕獲

また、天皇はスガルに三輪山の神の姿を見たいと言い、その怪力を見込んで大蛇を捕獲するよう命じました。スガルは見事に大蛇を捕らえましたが、その姿を見た天皇は恐れをなして逃げ出しました。捕らえられた大蛇は山に放たれ、その山は後に雷（イカヅチ）山と呼ばれるようになったと伝えられています。

雷を捕獲

『日本霊異記』には、さらに奇抜な逸話が記されています。天皇が宮中で寝ていた時、誤ってスガルが入り込んでしまい、天皇は恥じました。その時、雷が鳴り響いたため、天皇はスガルに雷を連れてくるように命じました。スガルは赤色のカヅラをつけ、赤旗を付けた鉾を持ち、馬に乗って雷を呼び寄せました。その結果、雷はスガルによって捕らえられ、天皇のもとへ運ばれたとされています。天皇は雷の威光に恐れをなして幣帛を捧げ、雷をもとの場所に返したと伝えられています。

スガルの死と雷塚

スガルの死後、天皇は彼の忠誠を偲び、雷が落ちた場所に墓を建てました。しかし、雷は碑文の柱を壊し、柱に足を挟まれて捕らえられたという話も残っています。その後、天皇は雷を逃がし、改めて「生きても死んでも雷を捕まえた栖軽の墓」という碑文を立てたとされています。この話は、スガルの伝説がいかに奇抜で、当時の人々に大きなインパクトを与えたかを物語っています。

その他の記録

『新撰姓氏録』には、少子部連が秦氏と関係があったことを示唆する記述があり、『和州五郡神社神名帳大略注解』には、スガルが多武敷の子、多清眼の弟であったという記録も存在します。これらの記録から、スガルが単なる伝説上の人物ではなく、実在の人物であり、様々な氏族と関わりがあったことが伺えます。

少子部蜾蠃は、その奇抜な行動と数々の伝説によって、古代史に独特な彩りを添える人物です。彼の物語は、古代日本の人々の信仰や文化、そして当時の社会情勢を理解する上で、重要な手がかりを与えてくれます。

参考文献

• - 『萬葉集』三　完訳　日本の古典3（小学館、1984年）
• - 『日本書紀』（三）（岩波文庫、1994年）
• - 原田敏明・高橋貢訳『日本霊異記』平凡社〈平凡社ライブラリー319〉、2011年8月。ISBN 978-4-582-76319-5。
• - 『コンサイス日本人名辞典 改訂新版』（三省堂、1993年） p802

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